今回は、SIMGOTの姉妹ブランド「MEETURE」より2020年2月1日に日本国内で正式発売された、リケーブル(ケーブル交換)可能ながら1万円を切る価格を実現した、コストパフォーマンスの高いシングルダイナミック型ドライバーイヤホン「MEETURE MT3 PRO」のレビューです。(SIMGOT Japan 様からの試供品にてレビュー)
"MEETURE" = "Meet the Future"
以前、SIMGOT EM2 という価格帯を超えるクオリティの「1万円台ボーカル最強イヤホン」のレビューをしましたが、今回の MEETURE MT3 PRO は、さらにお求めやすい1万円を切る「税込7,800円」という価格で、「MEETURE(ミーチュアー/ミーチャー?)」という「SIMGOT」の姉妹ブランドよりリリースされています。
「MEETURE」とは、「Meet the Future」からの造語のようで、科学と芸術への敬意を込めた「SIMGOT」ブランドの信頼と実績ある技術を用いながら、よりファッション性やトレンドなどを採り入れ、リーズナブルな価格帯でコストパフォーマンスを高めているブランドのようです。SIMGOT公式サイトには海外で先行している完全ワイヤレスイヤホンなども掲載されており、今後のラインナップにも期待です。
今回の「MT3 PRO」も、先行発売されていた海外のサイトで初めて見たときから「おぉ!」と気になり、ドライバーが上位機の EM2 や EN700PRO と同じということで期待していた機種です。(MT3 PRO と同じドライバー構成の SIMGOT EN700PRO は発売当時2万円弱という価格)
MT3 PRO はカラーバリエーションが4色あり、上位機のEM2と同様にクリアなシェルボディにほんのりと色づいているので、どの色もとてもきれいです。今回レビューするカラーは瑞々しい「グリーン」です。
プレゼントにも最適な MT3 PRO の上質なパッケージと付属品
カジュアルラインの機種ながら、MEETURE MT3 PRO のパッケージはシンプルで上品です。4色のカラバリと1万円を切る価格帯はプレゼントにも適しているので、なかなか好印象です。
巷では完全ワイヤレス(TWS)イヤホンが人気ですが、まだ価格に対する音質は圧倒的に有線イヤホンが上回っています。
加えて MEETURE MT3 PRO は、ケーブルが交換可能かつ付属のケーブルが見た目も美しくやわらかく取り回しがよいのもポイントが高いでしょう。7千円台のイヤホンにこのクオリティのケーブルが付属しているというのはかなり驚きです。
中高生の間では、iPhone付属イヤホンの「ケーブルをデコる」というのが以前流行っていたりと、耳元のイヤホン本体以上にケーブルはファッションとして目に入る部分なので、銀メッキ銅と高純度の銅線(OFC)の混合編みのケーブルは音質のためであるのはもちろんのこと、見た目の上品さときらびやかさを兼ね備えているという点でも、満足感があると共にプレゼントでも喜ばれそうです。
箱の中には、イヤホン本体、ケーブルの他に、純白のソフトポーチ、説明書などが入っています。説明書は英語と中国語だけで、日本語の説明書がないのが残念なところで、今後に期待したいところです。
イヤホン本体、ケーブル、プラグともに価格帯を超えるクオリティ
MEETURE MT3 PRO は、本体、ケーブル、プラグなども含め、上位機のEM2と変わらない精度のクオリティの高い出来で、SIMGOT独自のカバー付き2pin端子のケーブルをイヤホン本体に装着する際も、硬すぎず緩すぎない適度な摩擦でしっかりハマります。
3.5mmプラグは金属製ボディーで、EM2やEK3などの上位機よりも見た目の高級感があるほどです。
上位機と比べて見劣りする点といえば、セミハードケースではなくソフトポーチが付属している点くらいでしょうか。ソフトポーチはナイロン裏地のビーニルレザーのような素材なので、適度な強度はありますが紫外線などで劣化やすしそうなのがちょっと心配です。普段日の当たらないところに保管したり鞄に入れて持ち運びしていればそれほど気にしなくても良いとは思いますが。
装着感はとてもよく遮音性も高い
MT3 PRO には、SIMGOT共通の2種類のイヤーピースが各3サイズ付属しているので、耳へのフィット感、音の好みで選んで装着します。
イヤーピース(イヤーチップ)は、イヤホンを使う上で音質にも装着感にも大きく影響する部分なので、うまくフィットするものを選ばないと本来の音質が得られなかったりすぐに外れたりしてしまいます。イヤーピースを選ぶ際のおすすめ順としては、サイズの大きい方から順に音を聴きながら変えて試していくと、遮音性と装着感がちょうどよいものを早く見つけやすいと思います。
MT3 PRO のイヤホン本体(シェル)は EM2 と比べるとやや大きめですが、かなり耳にフィットしやすい形状かつ軽量なため、多くの人の耳にフィットしやすいのではないかと思います。個人的には、EM2 や EK3 よりも装着感がよく長時間装着しても違和感を感じません。
また、うまく耳にフィットすれば遮音性がかなり高いので、多少騒がしい場所でもボリュームを上げすぎずに音楽を楽しめ、音量を上げ気味でも静かな部屋でイヤーピースの先端を指先で塞いだ状態で30cmも離せば、ほとんど何も聴こえない程度には音漏れも少なめです。
尚、MT3 PRO の付属ケーブルは非常に柔らかく、顎や衣服などに擦れた際の「タッチノイズ」はほとんどなく気になりません。逆にその柔らかさゆえか、絡まりやすいという面はあります。
MEETURE MT3 PRO の音質:
一言でいうと、「力強い低音とスムーズな中〜高音で、ポップスやロックが楽しく聴ける音」に感じました。
EM2 などと比べると低音の力強さが際立ちますが、この価格帯によくある「超低音過多」にはならない程度の量感で、中音域〜高音域はなめらかで際立つ帯域や高音域の刺さりもなく聴き疲れしにくいので、万人受けしやすいバランスのよい音だと思います。
特に、大抵のイヤホンではキンキンした音になりやすい、アナログレコード時代の古いポップス音源がとても聴きやすいのが印象的です。
エージング(Burn-in)でかなり変化あり
箱から出した直後は、正直なところかなり粗っぽさがある音で、これはどうレビューしようか…と悩むほどでしたが、まる2日(約50時間)ほどエージング(バーンイン)を行ったところ、粗っぽさが消えて滑らかさやきめ細やかさが出てきました。
「エージング(Burn-in)」には人それぞれいろいろなやり方があるようですが、自分の場合は色々試した結果、普段試聴などに使っている「試聴用プレイリストをシャッフルでリピート再生し続ける」という方法に落ち着いています。今の所。
このプレイリストには、ありとあらゆるジャンルの、超高音域から20Hz以下の超低音域まで入った音源など計130曲以上あるので、帯域や波形の偏りなくあらゆるパターンの音をほぼまんべんなく鳴らせます。多分。尚、プレイヤーにつないだイヤホンは以前作った「Burn-in Bottle」に入れて放置するので、音漏れなども気になりません。 align-centre.hatenablog.com
試聴用プレイリスト簡易版
エージング後の音質評価を具体的に紹介していきます。
低音域:力強く際立つが過多にはならずベースが心地よい
MEETURE MT3 PRO で一番際立っているのが低音域です。この価格帯では低音が出過ぎる機種も多いですが、MT3 PRO の低音は約100Hz〜20Hz以下の超低音までボリューム感はありながら、ぼやけすぎることなくたっぷりと引き出してくれます。
ただ、超低域が極端に強烈な曲(「Daft Punk ft. Panda Bear - Doin' it Right」など)ではちょっと頭がクラクラする感じにはなります。「普通の」ポップスやロック、エレクトロニックポップではほぼ問題なく、ベースやリズムをたっぷり心地よく楽しめます。
中音域:女声ボーカル、男声ボーカルともに明瞭で、ギターも自然な鳴り方
中音域は、SIMGOTの最も得意とする音域とも言え、上位機種の EM2、EK3 でも非常に魅力的な鳴り方をしていますが、MT3 PRO もその例外にもれず、ボーカルに温かみのある肉声を感じやすい音です。
どんなボーカルも魅力的に聴けるのですが、MT3 PRO が他の機種と比べてとりわけ優れていると感じるのは、2.9kHz辺りを中心に上も下もなだらかな特性になっているためか、アナログレコード時代(60〜70年代頃?)の中音域が中心のポップス音源を聴いたときに、キンキンしたりうるさく感じることなく心地よく聴ける点です。
SIMGOT EM2 のレビューでは「1万円クラス ボーカル最強イヤホン」と呼びましたが、SIMGOT のイヤホンはボーカル帯域のチューニングが非常にうまいと毎度ながら感心します。
高音域:刺さらずシャリつかず、なだらかに自然にどこまでも伸びる
高音域は歯擦音の刺さりやシャリシャリ感は一切なく、突出した帯域がないため、とてもなだらかに自然に伸びていきます。強いて言えば8.6kHz付近にゆるやかな山がありますが、いわゆる「ドンシャリ系」のイヤホンが8〜9kHz付近が突出してしまうのに対し、MEETURE MT3 PRO にはそれがないため、まるでBA型ドライバーのイヤホンで聴いているかのような、なだらかで繊細な高域です。
空間・音像・解像度:広すぎず狭すぎず、音像が大きめで近くに感じやすい
音の空間(音場/sound stage)はどちらかというとやや狭いタイプで、音像は比較的頭の周囲に定位する感じです。また、ボーカルや楽器などの音像が大きめのため、近くで鳴っているように聴こえるかもしれません。
例えばオーケストラなどでは、高校の体育館のステージで演奏しているのが、小学校の体育館のステージに押し込んだかのように、各楽器がかなり手狭そうに定位します。その反面、ポップスやロックなど小編成のバンドは目の前に迫るような距離感で、ライブ感を感じやすい「元気な音」です。
解像度は高すぎず低すぎず粒立ちの良さあり、ギターソロや弾き語りなどは余韻もきれいに楽しめますが、音像が大きめになる関係か、フルートなど繊細でデリケートな音の表現はそれほど得意ではないようです。
音質評価の冒頭で「ポップスやロックが楽しく聴ける音」と表現したのはそうした面もあってのことで、おそらく普通のポップスやロックを聴く上ではほとんど気にならず、むしろ音が重なっても濁りにくいので、音数の多いポップスなども聴きやすく感じます。
1万円以下とは思えない、バランスのとれたコストパフォーマンスの高い優等生
MEETURE MT3 PRO は総合的には、1万円以下でこのレベルの表現力あるバランスのとれた音が聴けるというのは驚きで、付属品なども含めて非常にコストパフォーマンスが高いと感じます。
実は MT3 PRO を最初に聴いた時の感想が、「あれ? FiiO FA1J に似てる?」でした。FiiO FA1J はシングルBA型ドライバーで、MT3 PRO のダイナミック型ドライバーとは原理も特性も大きく異なります。BA型と錯覚するほどの自然な中〜高音域を楽しめるダイナミック型イヤホンというのも、この価格帯ではなかなかないので、MT3 PRO は他に高級なイヤホンを持っている方のサブ機として普段使いにもよさそうです。
MT3 PRO のスペックは、インピーダンス:18Ω、感度:≥108dB(1kHz)と、どんなプレイヤーやスマートホン、ヘッドホンアンプでも鳴らしやすく、iPhone 6s 直挿しでも、Lightning アダプターを使っても充分な音量と音質を発揮するので、見た目の美しさもあり、誰かへのあるいは自分へのプレゼントにも最適な機種の一つとしてオススメできます。