⚠ご注意:この記事で紹介する映像には極めて激しい明滅がありますので、視聴には充分ご注意ください。
先日、2019年の8月にベルギーで開催されたミュージックフェス「Pukkelpop」のエレクトロニック・ミュージック特設会場「Boiler Room」での、ホール全周から照射される圧巻のレーザー演出の高画質動画が YouTube にアップされ、Twitterでも拡散されて話題になっていました。
この時使用されたレーザーはなんと320基とのことで、世界記録だとか。
その前はと少し探すと、2017年に「LIVE DESIGN」が主催するアメリカのショー演出ビジネス見本市で、300基のレーザーを使ったデモンストレーションがあったようです。
世界最高峰のレーザー演出とトランスミュージック
こうした流れもあり、EDM/エレクトロニック系のフェスや大きめのクラブパーティーでは、定番のVJ映像や照明、スモークやフォグ、炎などに加え、従来は舞台照明の一種とも言えなくはなかったレーザーがその制御技術の進化などによって、光の演出での重要な要素として使われることが増えてきています。
中でも近年の欧米でのトランスミュージック(Trance Music)を中心とした大規模フェスや屋内フェスでは、レーザーによる演出が年々高度に進化し、音楽の一音一音に数十基のレーザーの多彩な動きを完全にシンクロさせ音と光が一体となった、まさに“Trance (恍惚)”状態へと誘うような演出がなされ、中にはVJと照明は最小限にしてレーザーを演出のメインにしたイベントも行われるようになっています。
今回はその中でも個人的にイチオシ(ただし行ったことはないw)の、世界最高峰のレーザー演出が堪能できるフェス&ショーを紹介!
音楽の聖地チェコのプラハを中心に開催される最先端のトランスミュージックフェス「Transmission Festival」
チェコのプラハ(Prague)と言えば、何世紀にも渡ってクラシック音楽からジャズ、ポピュラーミュージックなど幅広いジャンルの音楽に事欠かない都市ですが、そのプラハを代表する多目的スタジアム「O2 arena」の他、オーストラリアおよびアジアなど世界各地で開催される「Transmission Festival」は、毎年フェスの大きなストーリープロットに沿って、複数の巨大ディスプレイのVJ映像、何百基もの照明(ムービングヘッド/インテリジェントスキャナー)、数十基のレーザー、スモークやフォグ、炎などをそれぞれの特性を最大限に活かしつつ、すべてを完全に音楽と同期させた高度な演出で、名だたるトップDJ達の送り出すサウンドと共にフロアを異次元にトリップさせます(たぶん)。
「Transmission Festival」の公式YouTubeアカウントでは、2011年頃から毎年、主なDJのフルセット映像(1セットあたり約1時間15分)を4K高画質&高音質で公開しており、スマホやホームシアターはもちろんのこと、4K対応TVやモニタ、タブレットと、ちょっといいヘッドホンやイヤホンがあればどこでも会場に迫る迫力と感覚を味わえます。
レーザーによる演出の最高峰を追求した Gareth Emery による「Laserface」
英国出身のトランスプロデューサー/DJの Gareth Emery(ガレス・エメリー)と、世界的なレーザーデザイナー Anthony Garcia がタッグを組んだフルレーザー演出のトランスパーティーで、北米を中心に開催しており、昨年2019年には初めてヨーロッパ(イビサ)でも開催しています。 DJセットの一音一音に20基程のレーザーを超高速で完全にシンクロさせた「レーザーフェイス」は、名実ともに世界最高峰のレーザーショーとも言えるます。
Laserface も公式YouTubeアカウントにて4K高画質&高音質フルセット映像を公開しており、特に2019年の春にシアトルで開催された際の動画では、複数のレーザーでの円形の動作とスモーク/フォグを組み合わせ、レーザーのもつ直線的・平面的なイメージからは想像がつかないような「やわらかい」有機的なビジュアル表現も見られ、レーザー演出の最先端を垣間見ることができます。
Transmission Festival でも同様ですが、トランスミュージックの高速なサウンド展開に超高速で同期するレーザーの動きはYouTube動画のフレームレートを上回っているんじゃないか?とも思えるので、やはり生でしか体感できないのかもしれません。
レーザーを観客に照射して危なくない?
クラブやフェスなどで直接浴びることがないと誰しも思う疑問ですが、この手のレーザーは実際のところ眩しくありません。
高出力なレーザーはもちろん、普通のレーザーポインターでも眼を直撃すれば大変危険ですが、業界のガイドラインや機器の性能向上などにより、現在は安全性が十分確保されています。
具体的には、舞台演出用に使われる「レーザースキャナー」などと呼ばれるレーザープロジェクターは、レーザーポインターなどと違って実は超高速で点滅しており、1本の光条に見えるものでも小型軽量のミラーの超高速動作で照射角を変化させることで作り出しています。例えば大規模なフェスで使われるような機種では、レーザーの点滅速度が 50K pps(points per second)程度以上、つまり1回の照射時間は長くても5万分の1秒=0.02ミリ秒以下です。
また、クラブなどでの使われ方や今回紹介したようなレーザーショーの映像などを見ても、一定方向に連続した照射は上向きに、観客側の下を向く動作の場合は平面状の超高速スキャンにするなど、レーザー光が連続して目に入ることがないように演出されています。
むしろ小規模な会場や個人で持ち込むような安価な機種ではこのスペックが低かったり(pps値が小さい=1回の照射時間が長い、ミラーの動作が遅いステッピングモーター方式等)、業界のガイドラインなどを知らない可能性もあるため、そうした機器を使って万一観客に向けて照射してしまうと危険性が高く注意が必要です。
レーザーショーを行う業界では、国際レーザーディスプレイ協会(International Laser Display Association: ILDA)が安全のための枠組みや基準を作り、「Laser Safety Officer」資格認証の他、ILDAのメンバー企業が安全性を確保するための専用のソフトウェアや安全性に関する最新の情報などを提供し、「安全性」を絶対的な条件として掲げています。
- Safety is vital | International Laser Display Association
- If you are buying a projector | International Laser Display Association
そうした業界の努力によって現在の最先端のレーザーショーが実現され、今ではレーザー演出による失明等の危険性はほぼ排除されています。
ただし、YouTube動画でもわかるように、他の照明装置とは比べ物にならないほど超高速で明滅するため、子供(大抵年齢制限で入場できませんが)や光過敏の方、光によるてんかん発作のある方は避けたほうがよいのは言うまでもないでしょう。
日本で見られる日は来るのか?!
今の所、"Laserface" は北米中心で、日本から近いところでは "Transmission Asia" や "Transmission Australia" 辺りになりそうですが、Transmission Australia 2020 は、来週2月8日にシドニーで開催!
Transmission Asia 2020 のスケジュールは現時点ではまだ発表されていませんが、2019年は韓国での開催予定がキャンセル、2018年以前はタイで開催されており、今後の情報を要チェックです。
過去に日本から遠征した方のレポート
http://ultraedmjapan.com/2016/11/28/transmission-festival-asia/