以前「名前は大事」というエントリーで紹介した『ネーミングの掟と極意』という本、電化製品・ソフトウエアの開発者や、海外製品のローカライズを行う翻訳者の方にはぜひ読んでもらいたいと思う本の一つだ。
名前がいかに重要で影響力があるかは、以前のエントリー「名前は大事」「法律のネーミング」でも書いた通り。
しかし、名前をどうやってつけるかを、学校などで教わった記憶はほとんどない。
名前をつけるということが、それ自体独立して考えられることでないことは、次のブログの記事がうまく言い表している。
新しいモノに新しい名前を付けるということは、そのモノを他のモノから区別するということに他ならない。
名前は「それが何であるか」を表すのではなく、「それがそれ以外の何でもないこと」を表すのだ。そこでは暗黙のうちに「それ以外の何か」の存在を想定している。───「命名におけるマッハの原理」
こうした観点からの命名術に特化して論じた本をほとんど見ない。
『ネーミングの掟と極意』はそれを解説した希有な例でもあり、前半の解説編だけでなく、実際に名前を決めていく過程を先輩社員と後輩の会話の形式で進めていく「第2章 ネーミング道場乱取りタイム」がおもしろい。名前をつけるにあたって実際にどう考えていけばよいのか、一人であっても実際に頭の中で考えていく道筋に近い感じだ。
もう一つ、これに付け加えるとすれば「分類」だろうか。
「分類」はネーミングに密接に関連するものの、これを専門に扱う分野としては、「図書館情報学」か生物学の一部としての「系統分類学」くらいしか思いつかない。自分の身の周りだけかも知れないが、まず「分類」がまともにできない人が多い。先ほどの「命名におけるマッハの原理」を持ち出すまでもなく、「分類」ができて始めてネーミングのための思考基盤ができるのではないかと思う。
「分類」を「系統分類学」や「図書館情報学」などの専門分野ではなく、一般的なビジネスシーンでの例を中心に論じた本はないものか。ファイルサーバ上にいつの間にか作られる、階層を無視した意味不明なフォルダやファイルに辟易としている人は多いんじゃないだろうか。
『ネーミングの掟と極意』の著者、開米さんの次回作にも期待したい(笑)