最近ヘッドホンアンプが色々と気になっており、3月のポタフェスin名古屋で実際に聴いてみてますます気になり、にわかにマイブームになっています。
小型の USB DAC はそこそこ持っているのですが、純粋にアナログ入力のポータブルヘッドホンアンプがないということで、先日、「アナログ・ポータブルヘッドホンアンプ(ポタアン)比較一覧」というのを作ってみました。
で、これを作るために各機種のスペックを1機種づつ調べている中で、ある機種のスペック表示がおかしいな?と思って、輸入代理店(IC-CONNECTさん)に問い合わせてみたのがきっかけで、先にレビューした Astrotec AX-35 とあわせて、ポータブルヘッドホンアンプを3種類お借りすることが出来たので、比較試聴してみました。
中国TCG社製の超薄型ポタアン3機種
今回お借りしたのは、中国TCG社製の次の3機種。
手前から
で、どれもバッテリーを内蔵した超薄型のポータブルヘッドホンアンプです。
スペック比較
機種名 | SKINA | U-SKIN | TITAN |
---|---|---|---|
外観 | [asin:B00M66DKDK:image] | [asin:B00N22RV9Q:image] | [asin:B00N22DKA0:image] |
DAC | - | PCM2704 48kHz/16bit |
PCM2704 48kHz/16bit |
ラインアウト用 アンプ |
- | OPA2134 | OPA2134 |
ヘッドホンアンプ | TDA152 | MAX9722 | MAX9722 |
最大出力 | 100mW+100mW | 130mW+130mW(32Ω) | 130mW+130mW(32Ω) |
対応 インピーダンス |
16〜400Ω (16〜64Ω推奨) |
16〜300Ω (16〜64Ω推奨) |
16〜300Ω (16〜64Ω推奨) |
S/N比 | 105dB | 92dBA | 92dBA |
歪率(THD+N) | <0.001% | 0.0012%(10mW) | 0.0012%(10mW) |
周波数特性 | 10Hz-100kHz/1dB | 25Hz-50KHz | 25Hz-50KHz |
入出力端子 | ステレオミニ×1 ステレオミニ×1 |
USB-miniB×1 /ステレオミニ×1 ステレオミニ×1 |
USB-miniB×1 /ステレオミニ ステレオミニ×1 |
USB DAC 対応機種 |
- | Mac, Win | Mac, Win, Android(OTG) |
その他の機能 | - | - | ゲイン切替:3段階 EQ:2段階 |
バッテリー 再生時間 |
基板固定 750mAh 約80時間 |
BL-5C 1000mAh 約60時間 |
BL-5C 1000mAh 約35時間 |
寸法 | 85×58.6×9.54mm | 85×58.6×9.54mm | 93×62×11.8mm |
重量 | 100g/実測値:69.4g | 80g/実測値:77.3g | 108g/実測値:107.8g |
参考価格 | 7,980 ±(シルバー) 7,980 ±(ブルー) 7,980 ±(ブラック) |
9,800 ±(ブルー) 9,800 ±(ブラック) 9,680 ±(レッド) |
15,000 ± |
まず物理的な使い勝手という点で比較
ポータブルヘッドホンアンプ選びの重要な要素として、音質以外では
- サイズ
- 重量
- バッテリーの持ち
が挙げられると思いますが、SKINA と U-SKIN は、厚さ 9.54mm と、このクラスでは TOPPING NX2(9mm)に次ぐ超薄型なのが特徴的です。さらに縦横のサイズではトップクラスで文句ありません。
ただ、重量についてはメーカー公表のスペックと実測とで、TITAN 以外は重量が異っていました。
持た感じも TITAN はズシリとした重さがあるのに対し、U-SKIN と SKINA は軽量で、特に SKINA が非常に軽いのが際立っていましたが、実測してみるとやはりその順になっていました。
その上で、上の3項目全てで最も優れているのは SKINA ということになります。
ただ、U-SKIN と TITAN は汎用のバッテリ「BL-5C」を使用しており、簡単に入手と交換が可能なのに対し、SKINA は基板に直接半田付けされているため、バッテリの入手と交換が難しいという点が気になります。
アナログライン入力前提で音質を比較
今回は DAP や LINE OUT の USB DAC などと組み合わせて使うことを前提に、主にアナログライン入力を前提として「ヘッドホンアンプとして」聴き比べてみました。
U-SKIN と TITAN には USB DAC が搭載されていますが、16bit/48kHz の PCM2704、ということで USB DAC としては前世代機になりそうということもあり、今回は得には評価対象にはしていません。
PC内蔵DACが 24bit/96kHz 等ハイレゾ対応になっているのが当たり前の現在においては、スペック的に見劣りはしますが、念のため試してみると、PCの外部で D/A 変換を行うことで、立体感や音の分離という点では PC内蔵DAC+ヘッドホン出力(PC直挿し)よりはアドバンテージはあるようです。
また、Android を持っていないので TITAN のスマホUSB接続は試していませんが、試しに iPhone + Lightning USBカメラアダプタにつないでみたところでは U-SKIN、TITAN 共に電力不足で使用できませんでした。
テスト環境
テストに使用したDAPは、低コストで楽しめるものをということで、以前レビューしたハイレゾDAP「FiiO X1」を中心に使用しました。
PCからのテストは、USB DAC に「ALO Audio The Key」を使用し、再生ソフト「Audirvana Plus 2.1」で整数倍アップサンプリング(16bit/44.1kHz→32bit/352.8kHz)して出力しました。他にもブラウザ上で YouTube 動画の再生なども試しています。
この超小型USB DAC「The Key」は、ラインアウト端子のみなので、ヘッドホン/イヤホンで聴くにはヘッドホンアンプが別途必須ということもありますが、もともと3万円以上するものが、フジヤエービックさんのアウトレットで1万円台という、中古よりも安い価格で売られているのを見つけて思わずゲットしました。これは非常に使えます。
http://www.fujiya-avic.jp/products/detail72819.html
DAPとの接続ケーブルは、先日e☆イヤホンで発売されたばかりの「NOBUNAGA Labs VIABLUE 3.5mm-3.5mm 9cmショートケーブル(NLP-EP4-MM)」を使用。
http://www.e-earphone.jp/shop/shopdetail.html?brandcode=000000065800
このケーブル、発売即日に完売したという人気のケーブルで、発売日になんとかゲットできました。
それまで「FiiO L16」という、2千円ちょっとのケーブルを使ってましたが、このケーブルに替えると明らかに違いが分かるほど情報量が増え、繊細さも増して非常に気持ちよく聴けます。
気になる音質は?
まず先に3機種を様々なヘッドホン/イヤホンや曲で試聴して音質面での総合的な感想は次の通りに。
TITAN ≧ SKINA > U-SKIN
「U-SKIN」は今回の3機種の中では一番おとなしく無難な感じでした。 「TITAN」と「SKINA」は、甲乙つけがたい部分があり、それぞれ得意/不得意がある印象です。
「SKINA」は、躍動感あふれる力強く爽快感や元気のある音といった感じで、特にダンスミュージックやRock/Popsなどによさげ。
「TITAN」は、厚みのある音や繊細でしっとりした表現が得意で、ちょっと大人な音といった感じ。ジャズヴォーカルやバラード系に合いそうな印象です。
ポータブルDAPと組み合わせた場合の使い勝手
実際の利用シーンとしてポータブルDAP(デジタルオーディオプレイヤー)FiiO X1 と組み合わせた例を参考に載せておきます。
FiiO X1/X3 2nd の場合は、純正スタッキングキット「FiiO HS12」を使うとキレイにスタッキングできてオススメです。
FiiO X1 + TCG SKINA/U-SKIN
SKINA/U-SKIN はサイズが同じなので、写真はSKINAでの例ですが、幅は FiiO X1 とほぼ同じ(厳密には X1 の方が少し幅が狭い)で長さは少し短いので、こんな形になります。段差ができるので、ちょうどボリュームの誤操作防止になるかもしれません。
FiiO X1 + TCG TITAN
TITAN は若干幅が広く長いので、こんな感じになります。長さは X1 よりわずかに短い程度です。手でつかむとTITAN側をつかむ感じになります。
AK100/AK100Mk2 + SKINA/U-SKIN
価格帯的にこの組み合わせはあまりないかもしれませんが、AKシリーズ最小のAK100/AK100Mk2 は幅はピッタリなのですが、 SKINA/U-SKIN よりも短く、SKINA/U-SKIN が飛び出る結果となりました(笑)
個人的に選ぶなら「SKINA」
色々比較してみて、3機種の中で選ぶとするなら小型軽量かつコストパフォーマンスに優れ、バッテリーライフも長い 「SKINA」かなと思います。また、アナログオンリーの前提で考えると、TITANがほぼ2倍近い価格なので、コストパフォーマンスも3機種中では段トツです。
TITANの音質は魅力的なのですが、やはり「重い」というのと、「ゲイン切替」や「EQ(低音ブースト)」は個人的にほとんど使わないので、SKINAでも充分かなという感じです。
ほとんど持ち運ばず屋内での使用が前提という方や、色々なヘッドホン/イヤホンを使い分けたりする方には TITAN はオススメです。
また、U-SKIN は USB DAC が今となっては前時代的スペックなのと、USB DAC を搭載したためかアナログ段の音質が少々犠牲になっている感はあります。ただ、バッテリーが汎用バッテリーで、ユーザーで交換できる点はちょっと魅力的です。
基板が音質を如実に表している?
実は3機種とも内部を開けて基板を確認したのですが、使われている部品構成がそのまま音質に反映されているような印象を受けました。
「SKINA」基板
SKINA はバッテリーが交換できない点が残念ですが、アナログに特化した設計のためか、筐体の高さ限界ギリギリの直径の大容量電解コンデンサーが3つ、基板をくりぬいて横倒しで並んでおり、この超薄型の筐体に音質を優先して実装されている感があります。
「U-SKIN」基板
U-SKIN はOPアンプが異なるので単純比較はできませんが、バッテリーが占める面積は SKINA よりやや大きく、そこに USB DAC とラインアンプ、ヘッドホンアンプが同居するため、どうしても窮屈な回路構成で、コンデンサも小型のものが1つ横倒しで実装されています。
「TITAN」基板
TITAN では、バッテリーは U-SKIN と同一のものが使われていますが、筐体が大きくなっているため余裕があり、USB DAC とラインアンプを表面、ヘッドホンアンプを裏面に実装するなど余裕のある引き回しで、SKINA ほどではないにしても比較的容量の大きな扁平型の電解コンデンサが2個縦で実装されています。
ただ、SKINAの最大の難点は、バッテリーが交換できないことよりも、ボリュームに目盛の数字がない!ことかもしれません… 貸出機がたまたまそうなのか、全てそうなのか…
内部基板写真の掲載については、IC-CONNECTの担当者様よりTCGの社長様に直接ご確認いただいてOKを頂きました。ありがとうございますm(^^)m
低価格帯のオーディオ機器のレビューが少ない現状
ん万円するオーディオ機器は各メディアやオーディオ評論家の方が詳細にレビューしてくれたりしていますが、1万円前後の低価格帯の機種のレビューはネット上も含めて非常に少ないのが現状です。
しかし、オーディオに関心を持って、試しになにか買ってみよう?という方が、メディアや雑誌のレビューなどを参考にいきなり数万円の機器を購入するのは大きな冒険です。
このブログでは、中〜高級機のレビューはそうしたメディアや評論家の方にまかせるとして、エントリークラスの機器を中心に、写真や解説図などのビジュアルを多めにレビューすることをポリシーとしているので、今後も機会があればそうしたレビューをしていきたいと思います。
SKINA
[asin:B00S2GADEM:detail]U-SKIN
[asin:B00N22RV9Q:detail] [asin:B00UYG6RA2:detail] [asin:B00N22RV82:detail]