これまで、
- ポータブル USB DAC「DENON DA-10」レビュー 〜第1回:到着・ファーストインプレッション編 - white croquis
- ポータブル USB DAC「DENON DA-10」レビュー 〜第2回:音質評価編 - white croquis
と、DENON DA-10 の音質や位置づけなどについて取り上げてきましたが、最終回となる今回は、実際の「使い勝手」を中心にレビューし、最後に総評をまとめたいと思います。
やわらかなラインで構成された男女問わず愛着の持てるデザイン
第1回のファーストインプレッション編でも少し触れましたが、他社製品がゴツゴツしたり角のあるデザインのものが多いのに対し、DENON DA-10 は、
「DA-10の開発においてデザインコンセプトのひとつに、ユニセックスというものが出てきたのです。柔らかみのあるデザインにしたいという方針になりました」
【ポタ研】デノン、USB-DAC内蔵ポタアン「DA-10」発表会を開催 - 設計担当が開発秘話を語る (5/6) - Phile-web
とあるように、やわらかいラインで構成された丸みのあるデザインが特徴的です。
ゴツゴツした男性的なデザインは「堅牢性や剛性などを考慮した上での必然性」というのもあるとは思いますが、女性にも勧めようとする場合、やはり無骨なデザインのものよりは、やわらかみ、あたたかみのあるデザインのもののほうが勧めやすいでしょう。
デザイナーの端くれとしても、ここは「商品コンセプト」の時点で、競合する他社製品と比べて大きな違いだと感じます。
大きさは iPhone 6 とほぼ同じフットプリント
ちょうど、相方が iPhone 6 に機種変更したので、大きさを比べてみました。
すると、なんとツマミ部分を含めた大きさがほぼ一致。(下左の写真は近くから撮ったので、厚みの分 DA-10 の方が大きく見えています。)
本体の重さは約240gですが、持った感じは思ったより軽く感じます。
全周にわたって面取りがしてあり、片手でつかみやすい形と大きさなので、大きすぎず小さすぎずといったところでしょうか。
もう少し薄くならないものかと思わないでもないですが、内部に何層もの基板が詰まっており、アナログ出力段がディスクリート構成になっていることなどを考えると、この厚みは現時点では限界の大きさなのでしょう。
ボリュームノブは改善の余地あり?
DA-10 のボリュームノブは、バッグの中等での誤操作防止のためか、左右をガードに囲まれており、机の上に置いた時にはつまむことが出来ないので、上側を指で撫でるように回す感じになります。 また、比較的軽い力で回すことができるので、カバンの中で手探りで操作しようとしてボリュームを大きく変えてしまう可能性はあるので注意は必要です。
その他、極小音量時(ボリュームつまみの位置が〜9時の位置辺りまで)に、いわゆる「ギャングエラー」(左右の音量差)がありました。ただ、実際に聴く大きさ(10時以上の位置)では生じないので、実用上は支障はありません。
ちなみに、他のレビュアーさんの記事を見るとどうも個体差があるようで、この個体では極小音量時に左が大きく聴こえました。
電源ランプが見えにくく電源を切り忘れやすい...
ボリュームノブが電源を兼ねているので、機構としてはシンプルですが、電源ランプが下側、充電ランプが上側にあるため、電源ランプがヘッドホンのプラグやボリュームガードの死角になりやすく、電源を切り忘れることが何度かありました。
普段使っている FiiO E07K(下の写真右)は有機ELディスプレイを搭載しているので、視界に入っている限りは電源を切り忘れるといったことはないのですが、「ポータブルヘッドホンアンプ」という前提がある以上、バッテリーを無駄に消費してしまうことは極力避けたいので、電源ランプの位置と明るさ(ちょっと暗い)については検討の余地がありそうです。
本体側面のスイッチの位置がパッと見わかりづらい
もう一つ、ユーザーインターフェイス面で気になったのは、本体右側に配置された各種切替スイッチです。
並び方やスライド式スイッチの操作感は悪くないのですが、真横から見た時はいいとして、本体を斜めから見ると各スイッチがどっち側になっているのか非常にわかりづらいのです。
頻繁に使うスイッチではないので、実用上はあまり気にならないといえば気にならないのですが、「USB-DAC - iPod/iPhone - AUX」切替スイッチは使い方によっては頻繁に使う可能性もあるので、白いスジを入れたり、面に色をつけるなど、もう少し見た目上わかりやすくてもいいんじゃないかなと思います。
付属のキャリングケースは結構分厚い
DA-10には、iPhone や iPod といっしょに入れられるキャリングケースが付属しています。iPhone や iPod touch をケースに入れてもタッチパネル操作は出来ますが、何重にもなったベルクロで固定されるので、iPhone などを頻繁に取り出したり入れたりといった使い方には向いていません。一度入れたらそのままずっと…という使い方になりそうです。
また、結構分厚いです。感覚的にはサブウェイのサンドの雰囲気。
iPhone は別でもいいので、本体のみが入るケースを探してみるのもいいかもしれません。
イメージ(ぎりぎり入らなかった…)
初めての USB DAC にもオススメしたい、総合的にはとても魅力ある製品
DENON 初のポータブル USB-DAC ということもあってか、操作性の面で気になる点はいくつかありましたが、DA-10 には、それを補って余りある音質面での魅力があります。
現に今、この貸出機をまもなく返却するのが惜しく、このまま買い取ってしまいたい衝動に駆られています(笑)
オーディオに詳しくない相方(30代前半主婦)にもじっくり使ってもらった所、洋楽や最近の EDM などでは「劇的な臨場感/ライブ感」を感じたと興奮していましたが、あまり録音のよくない昔の J-POP では、そこまで劇的な変化は感じなかったとのことでした。一般の人でもその違いを感じられるというのは、それだけ、レコーディング環境やエンジニアの腕など、クオリティの違いをクッキリと描き分ける性能を持っているということなのでしょう。
「ハイレゾ」が流行り言葉になっているオーディオ業界ですが、「ハイレゾ」で音質がよいのは当たり前。今回、DA-10 を使ってみて、昔の CD でも録音クオリティの高いものは非常にハイクオリティな音で聴くことができ、改めて「CD-DA フォーマット」の完成度の高さを再認識させられました。
USB DAC は今や音楽好きにはマストアイテム
アクティブなライフスタイルを送りながら、「ハイレゾ」にはもちろん関心を持ちつつ、これまでに集めた膨大な「CD」という資産もこれまで以上の高音質で楽しんでみたいという、音楽を愛してやまない方にとって、DA-10 は4万円ちょっとの投資で充分お釣りが来るほどの感動や喜びが得られるアイテムだと思います。
普段、高級オーディオ機器には縁のない生活をしている身には、オーディオ機器でここまで興奮したのは久しぶりでした。