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イヤーパッドの素材や構造の違いによるヘッドホンの装着感と音質の変化を試してみた(YAXI編)

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イヤーパッドを変えると、装着感だけでなく音質も変わる?

前回の記事、「ULTRASONE Signature STUDIO の正確な音はそのままに、装着感を劇的に改善する交換用イヤーパッド「YAXI fix90」」では、事前に「この機種には YAXI fix90 が音質的にも合う」という情報を得ていたのですんなりとイヤーパッドを換装できたのですが、「交換用イヤーパッドはサイズさえ合えばよいのか?」というと、どうもそうでもないらしい?ということで、交換用イヤーパッドメーカーのYAXIさんのご厚意で素材の異なるイヤーパッドをお借りし、装着感や音質はどう変わるのかを試してみました。

その結果は、予想とやや違い…!?

YAXI製の3つの異なる素材・構造のイヤーパッド

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今回試してみたのは、「YAXI fix90」とサイズ的にほぼ互換のある、素材の異なる全3種類。
これを愛機のスタジオモニターヘッドホン、ULTRASONE Signature STUDIO に装着しての聴き比べです。

1. YAXI fix90

外側にプロテインレザー、内径部にPUウレタン素材を使用した断面形状が角型のタイプ。

2. YAXI MSR7 Comfort

audio-technica ATH-MSR7 用に作られ、接触面に車のシートなどでもおなじみの「アルカンターラ®」を使用したタイプ。

3. YAXI Stpad Microfiber

断面形状がほぼ円形の、外側がマイクロファイバーでできたタイプ。

断面形状と素材の違い

3種類のイヤーパッドの断面形状と使われている素材を比較すると、次のようになっています。
これを踏まえて、装着感や音質を確認していきます。

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装着感はやはりアルカンターラが圧倒的

まず、素材の違いによる装着感は次のような感じになりました。

1. YAXI fix90

内部のウレタンが柔らかく吸い付くような装着感で、遮音性も高く多少動いてもずれることがありません。

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2. YAXI MSR7 Comfort

fix90とほぼ同様の柔らかさで、サラッとしたアルカンターラの感触がとても心地よく、3種類の中では一番つけ心地がよいと感じました。さすが、「Comfort」の名がつくだけのことはあります。

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3. YAXI Stpad Microfiber

サラッと軽くソフトな装着感です。低反発素材を使用しているためか他の2つよりはやや硬めの感触。断面形状が円形で他の2種類と比べて肌への接触面積が少ないこともあってか、長時間使っても一番蒸れにくそうな雰囲気です。

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柔らかさの比較

参考までに、各イヤーパッドの柔らかさを比較した写真がこちら。
イヤーパッドの上に Suica を載せ、その上に今回の比較にも使った Astell&Kern のハイレゾDAP「KANN」(約278g)を載せた状態です。ほとんど変形していない UTRASONE Signature STUDIO の純正イヤーパッドが、いかに硬いかがわかります(笑)

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Astell&Kern KANN Eos Blue

Astell&Kern KANN Eos Blue

注目の音質の違い

音の違いは、左右両方のイヤーパッドを交換した場合と、左右で異なるイヤーパッドを装着しての聴き比べもしてみました。

1. YAXI fix90

遮音性が高く、ULTRASONE 純正イヤーパッドを軽く押さえて密着させたときと同等の帯域バランスと音色。
このイヤーパッドは外側はプロテインレザーですが、内径部にPUウレタン素材を使用することで余分な反響を抑えた設計とのことで、納得の結果です。

2. YAXI MSR7 Comfort

「fix90」と似ているかと思いきや、中低域〜低域が一定量減衰してしまい、帯域バランスが変わってしまいました。
トーンジェネレーターアプリで周波数を調べてみると、おおよそ60〜300Hz辺りの低域〜中低域が減衰して、中域〜高域が際立つややドライな音になっていました。
おそらく、不織布構造のアルカンターラ素材の部分が肌に接するため、そこで低域が抜けてしまっているのでは?と推測されます。

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3. YAXI Stpad Microfiber

こちらも「MSR7 Comfort」と同じく、60〜300Hz辺りの低域〜中低域が減衰してしまう結果となりました。
やはりアルカンターラと同様に音を通しやすいマイクロファイバー素材では、低域が抜けてしまうようです。

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結果と考察

  • ULTRASONE Signature STUDIO では「fix90」が音質面でもベスト。
  • アルカンターラマイクロファイバーなど、通気性の良い素材は装着感が良い代わりに音も通しやすく、おそらく内部のウレタンでの吸音や漏れ等により、低音が減衰しやすい。
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今回の3種類は、日本のスタジオモニターヘッドホンの定番でもある「SONY MDR-CD900ST」に適したイヤーパッドとしても販売されているため、CD900STで試すとまた違った結果になるかもしれません。
CD900STは以前使っていたことがありますが、低音はそれほど出ない機種だったように思うので、低域が減衰してしまう点はそれほど気にならないのかもしれません(未確認)。

SONY 密閉型スタジオモニターヘッドホン MDR-CD900ST

SONY 密閉型スタジオモニターヘッドホン MDR-CD900ST

ヘッドホンの音はイヤーパッドでチューニングできる?

今回試してみて、イヤーパッドが肌に接する部分の密閉度および素材の音の通しやすさによって、ここまで大きく変わるというのは意外でした。もともと純正イヤーパッドでは所々に若干隙間があったのが、「fix90」で隙間がなくなって低域がよりしっかり正確に出るようになったのと、逆のことが起きたようにも見えます。

モニターヘッドホンとしてはやはり帯域バランスも重要なので、結果としては ULTRASONE Signature STUDIO には「fix90」がやはりベストということが改めて確認できた形ですが、この原理を利用すれば、もともと低域が強すぎたり音がこもり気味なヘッドホンのイヤーパッドを、レザー系のものからマイクロファイバーアルカンターラなど音を通しやすい素材のものに交換することで、低域をタイトにした開放感ある音にチューニングすることができるかもしれません。

カナル型イヤホンでイヤーピース(イヤーチップ)を変えると音が大きく変わるように、ヘッドホンでもイヤーパッドを変えると似たようなことが起きるのは、言われてみれば当然かもしれませんが、イヤーパッドはイヤーピースのように仕様が概ね共通しているわけではなく、普段はあまり思いつかないところだったので、今回試すことができてよい収穫になりました。

ヘッドホンメーカーがヘッドホンの音をチューニングする際、機種ごとに大きさや形が異なるだけでなく、どういった素材を使うかも重要な位置を占めていそうですが、頭の大きさや形など個人差によってフィット感は異なるので、メーカー純正以外のイヤーパッドを試してみるというのも、ヘッドホンをより活かす一つの方法かもしれません。

イヤーパッドを試せる場所

イヤーパッドは通常消耗品扱いになっていることが多く、事前に試すことが難しい製品ですが、東京・大阪・名古屋に店舗のある「eイヤホン」では、Webの製品ページで店舗にサンプル(試聴機)があるかどうか確認することができるので、訪れる際にこのページで確認して試聴機があれば事前に試すことができます。

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イヤーパッドはヘッドホンにとってのオーディオルーム

YAXIさんのホームページのトップには、「イヤーパッドはヘッドホンのオーディオルーム」と書かれており、なるほど!と思いました。

イヤーパッドはヘッドホンのオーディオルーム

ヘッドホンにとってイヤーパッドとは、スピーカーにとってのオーディオルームと似た存在。イヤーパッドをデザインするということはオーディオルームの内装をデザインしているということになる。

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ヘッドホン イヤーパッド 交換のことならヤクシー - YAXI EARPADS

部屋の形や大きさ、内装の材質、カーペットの有無などによって音の響き方が変わったり、学校の音楽室やコンサートホールなどの壁に無数の穴が開いているように、オーディオの世界でも「部屋」は音を左右する重要な要素です。
例えば、スピーカーの性能を最大限に発揮させるために、部屋の中での音の反響を調節する、ルームチューニングのための吸音や撹乱する内装材や什器などが多く販売されています。

それと同様の考え方が、ヘッドホンにおいても当てはめられるということでしょう。

ヘッドホンのイヤーパッドが内側まで破れてきたら交換を♪

ヘッドホンのイヤーパッドは、特に合成皮革のものは経年劣化によってボロボロになって、中のウレタンスポンジが見える状態になったりしますが、特にヘッドホンの内側まで劣化してくると、その状態ではそのヘッドホンの本来の音が出ていない可能性があります。

イヤーパッド用のカバーなどを使うと、劣化部分を見えないようにすることはできますが、内部での音の反響なども含めたヘッドホン本来の音を再生できなくなっている場合もありますので、ぜひ新しいものに交換してみてはいかがでしょうか。
その際、メーカー純正品でもよいですが、今回のようにサードパーティイヤーパッドにも優れたものがあるので、チューニングをする感覚で試してみるのも面白いと思います。

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