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思索と探索のクロッキー帳。オーディオや音楽の話題、レビューなども。

春のヘッドフォン祭2019 レポート 〜1. イヤホン・ヘッドホン編

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平成最後の土日、2019年4月27日(土)〜28日(日)にかけて、東京の中野サンプラザで「春のヘッドフォン祭2019」が開催され、1日半ほど参加してきました。

今回はそこで試聴した新製品や開発中のプロトタイプ、気になったものなどを iPhone で撮った写真とともにお届けしたいと思います。

「ヘッドフォン祭」とは?

ヘッドフォンさい」は、東京・中野を拠点とする「フジヤカメラ店」のオーディオ・ビジュアル専門店「フジヤエービック」が2008年から毎年春と秋に開催している、名前の通り「ヘッドフォン」を中心としたポータブルオーディオ、デスクトップオーディオ機器の展示会です。

「オーディオショウ」などの据置オーディオの展示会はユーザーの高齢化が進んでしまっていますが、日本の住宅事情や公共交通機関の利用が多いライフスタイルから、ポータブルオーディオはより若い層に人気で、毎回活気に満ちています。
また、ヘッドフォン祭は国内外のオーディオメーカーがこぞって新製品を発表する場としても知られ、海外のオーディオファンや関係者からも注目を集めています。

ヘッドフォン祭 公式サイト


春のヘッドフォン祭2019 会場マップ

(2日間でも全て廻り切るのは無理…)

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春のヘッドフォン祭2019 イヤホン編 その1「中国・アジアメーカー」

もともと国内に代理店のなかった中国の新興メーカー製のイヤホンは「中華イヤホン」などと呼ばれ、数年前から低価格帯を中心に雨後の筍のごとくおびただしい数がリリースされていましたが、その中でも国内代理店がついて日本国内向けに流通販売される機種が徐々に増え、音質や品質だけで比較すると、今や従来からの国内メーカーや欧米系のメーカーを脅かす存在にさえなろうとしています。

さらに、ここ1、2年の音質面、品質面でのレベルアップは目覚ましく、国内代理店の働きかけで日本市場向けにブラッシュアップするなど、現在のイヤホン市場はなかなかレベルの高い戦いになっています。
数年前なら数秒試聴して「あ、これダメだ」という機種が結構あったのですが、今はむしろ国内メーカー製品よりよいんでは?と思うものも多く、様相がかなり変わっています。

TANCHJIM CORA

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中国のブランドTANCHJIM(タンチジム)から5千円台で先日発売されたばかりの小型・軽量・ポップなデザインのイヤホン「CORA」。
耳掛け式ながらとても小さく、女性など耳の小さな方でもフィットしそうな感じです。
驚くほど音のバランスがよく、高域から低域までほぼフラット。最近やや派手気味な音の機種が多い中、派手すぎず地味すぎず聴き疲れしにくそうな音。あらゆるジャンルの曲で試聴してみましたが、ジャンルを問わないオールマイティさがあります。

TANCHJIM Blues

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CORAと同様小型の筐体で、樹脂製のCORAに対してステンレス筐体のモデルとのこと。筐体がとても美しく、CORAより明るく元気なメリハリのある音。この音は好きな人が多そうで、発売が楽しみな機種です。

TANCHJIM は昨年より発売されている「Darkside」「Oxygen」というイヤホンがどちらも完成度が高く人気で、今後が楽しみなブランドです。

Simphonio VR1

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セラミック製ダイナミックドライバーを搭載したイヤホン。
セラミックドライバーというイメージから、硬めの音を想像していたら、意外にもしなやかで緻密な音。お値段かなりお高め…

Fidue A93 Artemis

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Fidue の現行フラッグシップ機「A91 Sirius」(4BA+1DD)の上位機となる、新フラッグシップ機。4BA+1DD+1CT(セラミックツィーター)ハイブリッド。
ボーカルが非常によく映えて聴こえたのが印象的で、繊細さと重厚さも併せ持つリッチ&ゴージャスなサウンド。お値段もおそらくリッチ&ゴージャス…

FiiO FA1J, FA7J

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FiiO初のBAドライバーイヤホン「FA1」「FA7」をベースに、日本向けにチューニングされた日本限定モデル。
FA1J/FA7J 共通形状のシェルは、光造形の一種、DLP(Digital Light Processing)方式の3Dプリンタで製造しているようで、非常に透明度が高く内部は空洞ではなく樹脂で詰まった状態。シェル形状が絶妙でフィット感が非常に良いため、充填タイプのシェルながら重さも気になりません。

FA1J

メリハリがあって粒立ちのよい元気な音。帯域バランスも良好で、レンジが広く高域もよく伸びています。1BAと言われなければダイナミック型?と思ってしまうような音。
日本向けモデル「J」はオリジナルモデルよりも低域をやや抑えてあるとのことで、1万円台の見込みとか。これは買いでは。
ただ個人的には超低域がやや物足りなく感じたので、オリジナルモデルの FA1 も聴いてみたかった所。海外通販で買えばいいのだけど…

FA7J

4BAドライバーモデル。こちらは元気なFA1Jとうってかわって、正統派・清純さを感じさせるような一言で言えば「上品」な音。派手さはないものの、シルクの手触りのようなきめ細やかさがあり、しっとりと美しく奏でるようなイメージ。

FA1J、FA7J、どちらも完成度が高く、それぞれのキャラクターのよさがあるので悩ましい所です。

Acoustune HS1695 Ti Gold, HS1655 CU White

香港に拠点をおく独創的なイヤホンを作っている「Acoustune」。国際分業体制で設計は日本で行っているようで、今までは展示会で設計に携わっている担当者さんと直接お話できたのが、今年になって代理店が「日本ディックス」から「aiuto(アユート)」に移ったため、今回から直接設計者さんとお話ができなくなってしまいました。

今回参考展示された機種は、従来のMMCX端子に替わって、より接続安定性を高めた新しい独自端子を採用しています。

HS1695 Ti Gold

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他にないデザインが特徴で抜群の音質を誇る「HS16XXシリーズ」新バリエーションの、チタンチャンバー/金メッキステンレスハウジングモデル。
現行最新モデル「HS1650 CU」「HS1670 SS」でほぼ完成したかと思えたこのシリーズ、軽量で柔軟さをもつチタンチャンバーのおかげか、ベースとなった(?)ステンレスチャンバーモデル「HS1670 SS」と比べると、音が驚くほど軽やかに出る印象。繊細できめ細かい表現で高域が気持ちよく、音も見た目も非常に美しい機種。

HS1655 CU White

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すでに発売されている真鍮チャンバー/銅ハウジングモデル「HS1650 CU」のカラーバリエーション違いかと思いきや、若干チューニングを変更しており、その分「+5」された型番とのこと。マットホワイトの、あまり他で見ない独特の質感。 真鍮チャンバーモデルならではの響きと余韻が綺麗。HS1650CUと違いを聴き比べるのを忘れました…orz

Cayin YB40

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今回最も印象に残ったイヤホン。 世界初公開。

20年来、据置型真空管アンプを開発製造している Cayin 初となるイヤホン「YB40」。
見た目の精緻な造形にそそられるだけでなく、その音がすごかった。

真空管アンプを源流にもつ Cayin の "Sound Signature" がしっかりと感じられ、中高域の楽器の響きや余韻が並外れて美しく、まさに真空管のようなアナログ感のあるリッチサウンド。革のケースが付属し、外観も音もディティールへのこだわりに圧倒されます。

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なんとか6万円程度で出したいとのことで、それを聞くまでその倍くらいはするかと思っていました(笑)。
まだプロトタイプで、展示会でのフィードバックをもとに最終チューニングを行った上でリリースするそうですが、もうこのままでリリースしてもよいんでは?と思うような出来。とても楽しみな機種です。

春のヘッドフォン祭2019 イヤホン編 その2「国内メーカー」

中国メーカーは確かに勢力を拡大していますが、国内の独創的なメーカーも日本ならではの製品を開発して人気を得ています。
ヘッドフォン祭にはもちろん大手メーカー各社も出展されていましたが、今回は主にベンチャー企業ベンチャー事業としてオーディオ製品の開発を行っているメーカーを中心に試聴しましたので、その一端を紹介したいと思います。

Japaear JEG-Aurora 6BAMAX

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同じ地元の愛知県ということで、初期の頃から注目して歴代の製品をずっと聴いてきているメーカーさんです。

今回出展されたのは、前日の夜にチューニングが完了したという、現時点で Japaear として最高の音を実現したという機種。
高域から低域までの帯域バランスがとてもよく、粒立ちのよい立体感ある空間を感じさせる音。かつ、ハウジングのフェイスプレートにあしらわれたホログラムのように、高域にキラリと光るきらびやかさを感じました。

NUARL NX310A, NX30A

昨年、参考試作機が展示されていた、独自開発の小型ダイナミック型ドライバー「N6」を採用した新デザインのイヤホン。筐体の素材とケーブル、音響技術「HDSS」搭載の有無の違いで、4千円台の「NX310A」と9千円台の「NX30A」の2種類がラインナップされ、それぞれ音質傾向がかなり違ったものになっています。

NX310A

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アルミ筐体モデル。ドライで元気なイマドキな感じの音。4,860円。

NX30A

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真鍮筐体モデル。NX310Aとはケーブルも異なり、「HDSS」を搭載。こちらはしっとりなめらかで均整のとれた音。9,720円。

両機種、どちらが上という関係ではなくそれぞれの個性で好みを選んでいただくコンセプトとのこと。
外観上は、素材による筐体色の違いと、ケーブルの編み方が異なることで識別ができます。下の写真でそれぞれ左が真鍮モデルのNX30A、右がアルミモデルのNX310A。

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NUARLの従来のシリーズに比べて大幅に小型軽量化され、そのまま装着にも耳掛け式での装着にも両方対応したこの独特のデザインは、そのまま装着しても耳から飛び出た状態になることがなく、耳たぶに触れにくい形になっているため装着感がとてもよい印象でした。

final "B series"

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究極のイヤホンやヘッドホンを作り続けている、final からの提案となる、BAドライバーを使ったイヤホンシリーズ。 「人間が良いと感じるものはいかなるサウンドか」を追い求めた開発コンセプトとのことで、それぞれ構成やチューニングの異なる3パターンの音を具現化したイヤホン「B1」「B2」「B3」の3機種が出展されました。

試聴時に、試聴の順番が決められており、その順番に紹介します。

B2(1BA)

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小型ダイナミックドライバーのEシリーズにも近い、誇張のないニュートラルな1BAらしい音、という印象。

B3(2BA)

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音の粒立ちがよく、高域から低域までバランスのよい「キレイな音」、という印象。
個人的には一番好きな音。

B1(1BA+1D)

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やや派手さがあり、ダイナミックドライバーが入ったなとわかる、レンジの広いハイブリッドらしい音、という印象。

以上3機種、それぞれ音色傾向が異なるものの、それぞれで完成されている音で、どれが一番上といった順位のないシリーズです。6月下旬に発売予定とのことで、どの機種が人気を集めるかにも注目です。

先程のNUARLの2機種もそうでしたが、こうした音色の異なる機種を同時に出す提案型製品、というのが今年のトレンドの一つかもしれません。

春のヘッドフォン祭2019 イヤホン編 その3「欧米メーカー」

高級イヤホンの本場はアメリカ・ヨーロッパで、びっくりするような価格のイヤホンが各社から出ていますが、今回はあまり廻れなかった中で辛うじて視聴できた、間もなく発売される新機種を紹介します。

Campfire Audio IO(アイ・オー)

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木星(Jupiter)の、火山を持つ衛星「イオ」の名を冠した2BA機「IO(アイ・オー)」。ブースにいらっしゃった、Campfire Audioの方に名前の由来を聞いたら「その通り」と言っていました。
やや「ORION」に似た中高域は、どこまでも広がっていくような浮遊感があり、高域から低域までとてもスムーズでナチュラルな音でした。今までにないような音という印象です。

木星の衛星「イオ」

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Overview | Io – NASA Solar System Exploration

Campfire Audio は毎回本社から大勢いらっしゃって、試聴の対応もその方々が行うので、カタコトノエイゴで感想を伝えたり質問したりするのがドキドキします(汗

Noble Audio Khan

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Noble Audio のユニバーサルIEM新フラッグシップ機。かなりお高い機種です…

「全ての音が適切に鳴っている」という印象で、何も過不足ない本当に上質な音。
Noble Audio らしい粒立ちのよい音で、解像度が非常に高いのだけど、高解像度機にありがちなキツさを全く感じない絶妙なチューニング。

今回、Noble Audio の創設者で、そのカスタムIEMのデザインの美しさから "Wizard" とも呼ばれている John Moulton 博士も来日しており、個人的にも「Noble Audio Sage」をリファレンス機として愛用していることから、John Moulton 博士に話しかけて握手をしてもらったのが、今回のヘッドフォン祭のハイライトです(笑)

春のヘッドフォン祭2019 ヘッドホン編

えー、ヘッドフォン祭ということでヘッドホンも多数出展されていましたが、今回試聴したのは1機種のみで、そのあまり衝撃に他の機種は目に入りませんでした…というのは半分冗談半分本当です。聴こうと思っていた機種がどこのブースにあるのか見つけられませんでした…(泣

その唯一試聴した機種がコチラです。

RAAL-requisite SR1a "True Ribbon Earfield™ Monitor"

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SF映画に出てきそうな外観の、ヘッドホンと呼んでよいのかわからない「装置」。装着するとドライバー面は耳から離れて空中に浮いた状態に。
とてつもなく広い空間、立体感で音が鳴る!高域から低域までバランスがよく、スピーカーともヘッドホンともつかない不思議な感じの気持ちのよい音を出します。

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リボンドライバーから音が出る仕組みで、ヘッドホンアンプではなくスピーカー用の100W以上のパワーアンプで駆動。そのため、スピーカー入力から変換を行う専用のインターフェイスBOXが付属。
全てが型破りなこのヘッドホンのような装置、おそらくこの機種でしか体験できない音でしょう。

イヤホン・ヘッドホン編雑感

出展されていたのにここに出ていない機種は、聴きそびれたか見逃したか見つけられなかったか写真撮り忘れたかのどれかです…

オーディオ系Webメディアの情報などを見ると、アレもコレも聴き忘れたー!というのがたくさんあり、あ"ーっとなりますが、だいたい毎回そんな感じなので、そういうものだと思っておいたほうがよさそうです。

今回はヘッドホンよりもイヤホンに注目の製品が多かった印象で、やはり置き場所もとらないイヤホンのほうが人気ということでしょうか。個人的にはヘッドホンの方が音の響き方や耳への負担などの点で好きですが… さすがに夏は外でヘッドホンは無理ですが。

イヤホンは全体的に、1、2年程前から数千円台の低価格帯の機種が劇的にレベルアップした影響か、全体が底上げされたように各メーカーともレベルの高い戦いになっている印象です。
特に数千円台、1万円前後、2〜3万円、5〜7万円クラスのレベルアップが目覚ましく、10万円超クラスをも凌ぐ優秀な機種が多く出てきており、コストパフォーマンスが一段と高まっている気がします。


次回、レポートの続きは「ハイレゾDAP」「ヘッドホンアンプ」「Bluetoothレシーバー」などの予定です。

続きはこちら「プレイヤー(ハイレゾDAP)編」