white croquis

思索と探索のクロッキー帳。オーディオや音楽の話題、レビューなども。

Windows 8.1 をようやく触ってみたら驚愕の連続だった...

f:id:align_centre:20140407210738j:plain

個人では「漢字Talk」と呼ばれていた頃から Mac をメインで使い続けていますが、以前いた会社で Windows Server や Active DirectoryWindows ドメイン)を構築したり、端末やドメインユーザーの管理・サポートをしていた関係で、普通のユーザーよりは Windows には詳しい方だと思います。

しかし、その後在籍した会社では、どこも Windows は XP/7 が主流だったので、2012年の秋に Windows 8 がリリースされてから、今まで Windows 8/8.1 をじっくり触ったことがありませんでした

ものの試しに Windows 8.1 with Update をインストールしてみた

当面は自分には関係ないだろうと思っていましたが、Microsoft や販売各社が Windows XP サポート終了/XP→8.1乗換キャンペーンにあまりに躍起になっているので、Microsoft の「TechNet サブスクリプション」(昨年夏に新規受付終了)を個人的に購入・契約しているのを思い出して、試しに昔使っていた「ネットブック」(TOSHIBA NB100/H)に Windows 8.1 Pro をインストールしてみました

ちょうど 4月8日(日本時間では4月9日)に一般向けリリース予定の「Windows 8.1 Update」が TechNet サブスクリプションでは先行提供されていたので、これも適用した最新版です。

f:id:align_centre:20140407221403p:plain f:id:align_centre:20140407221413p:plain

SDHCカードReadyBoost 用に挿入した状態で触ってみた感じでは、元の Windows XP よりもむしろ軽快に感じました。
Windows 8.1 からは「エクスペリエンスインデックス」表示機能がなくなってしまったので、右の画面は、WinSAT Viewer で表示したものです。

「ユーザー」と「パソコン」の関係が再定義された?

驚愕の「Microsoft アカウント」一元化

インストール、セットアップ時にまず驚いたのは、インターネットに接続した状態でインストールを進めると、ログインアカウントを登録する際に「Microsoft アカウント」で登録する画面だけが現れ、Windows 7 までの常識だった「ローカルユーザー」の選択肢すら画面上に出てこず、Microsoft アカウント」を入力するか新規登録しないとそれ以上先に進めない!ということでした。

回避法:
Windows 8.1 の新規インストール時に Microsoft アカウントを使わずにインストールする | SE の雑記

Microsoft アカウント」は、Microsoft が提供する様々なオンラインサービスを利用するために、「メールアドレス」を使って登録するものですが、例えば以前から「Hotmail」や「Outlook.com」メールを使っている人は、そのメールアドレスを強制的にパソコンのログインユーザーアカウントにさせようという意図のようです。

パソコンにログオンする「ユーザーアカウント」と「メールアドレス」が同一になるということが何を意味するか? 1度パソコンにログオンさえすれば、そのメールアドレスに紐付いたオンラインサービスや個人的な情報に全てアクセスできる(=できてしまう)ということです。ログオンしている間はそのパソコンは何から何まで「そのメールアドレス専用」になります。一見とても便利そうですが、運用次第では悩みの種になりそうです。

中小企業では混乱必至では?

おそらくこれは中小企業など、特にPC管理者もおらず設定・運用ルールも決められていないような職場では、かなり厄介なものになるのではと思います。

というのも、今まで中小企業・組織をいくつも経験(在籍や訪問等)してきた中で、

  • 「ユーザー」や「アクセス権」という概念を社員が意識していない
  • 「Administrator」を自分のログオンアカウントとして使っている
  • 「パソコン」はあくまで業務用機械で、起動すると自動ログオンするようになっていて事実上誰でも使える
  • 共有フォルダへのアクセスのために複数人で共通のユーザー名/パスワードでログオンしている
  • ある社員のユーザーでログオンしたパソコンを他の社員やパート、バイトさんに操作させることが常態化している
  • 親切にもログオン用のユーザー名とパスワードが付箋で貼ってある

といった環境を数多く見てきているからです。

IT管理部門があるような中堅〜大企業では通常、Windows Server でユーザーや端末を集中管理する「Active DirectoryWindows ドメイン)」を構築しているので、一般社員がこうした問題に直面することはほとんどないでしょう。しかし世の中、大企業より中小企業に勤める人のほうが圧倒的に多いはずです。

家庭でもユーザーIDを共用している場合は運用の見直しを迫られる?

家庭で1台のパソコンを共用している場合は、家族がそれぞれのメールアドレスを持っていれば、それぞれのメールアドレスを Microsoft アカウントとして登録すればよいでしょう。しかし、自動ログオンで実質的に一つのユーザーアカウントを共用して使っている場合、面倒なことになりそうです。子供のいたずらが「いたずらで済まなくなる」可能性もあり得ます。

総じて考えると、Microsoft の推奨するセットアップ方法でパソコンをセットアップする場合、Windows 8/8.1 は「パソコン」というより「携帯電話」に近い感覚でとらえたほうがよいのではないかと思います。

「パソコンは1台を共用」から「パソコンは1人1台」が当たり前になり、むしろ今は「スマホは1人1台+パソコンはあまり使わないのでやっぱり共用+タブレット端末を共用」になりつつある節もあるので、「ユーザー」と「端末」の関係が一段と複雑になりそうです。

ローカルアカウントでログオンした状態ではストアアプリはインストール出来ない

ちなみに、アプリケーションを「Microsoft ストア」(iPhoneMacOS X で言うところの「App Store」のようなもの)からダウンロードするためには、たとえ無料のアプリでも、パソコン自体に Microsoft アカウント(メールアドレス)でのログオンが「必須」です。

後で「Microsoft アカウントとの関連付け」を解除することはできますが、AppleApp Store やネットショップで買い物をする時のように「サイトにログイン」という感覚で使うことが出来ないのです。これは今までにない「ユーザー」と「端末」の関係の概念で、正直、驚愕しました。

頭のなかに全く新しい概念モデルが必要な「Modern UI」

Windows 8/8.1 の最大の特徴はなんといっても、タブレット端末など、タッチ・ユーザーインターフェイスに最適化された画面構成でしょう。しかし、その恩恵に預かれるのはタブレット端末を使うユーザーくらいで、今までどおりの「パソコン」として使いたい人にとっては今までの操作方法が全く通用しなくなってしまいました。

8.1 Update でアレコレ触ってみましたが、人間がそれまで経験していない、頭の中に全く新しい「概念モデル(メンタルモデル)」を作らないと、その構成や関連性の把握や理解が非常に難しく感じました。一言で言えば「直感的でない」「非連続」といったところでしょうか。

f:id:align_centre:20140408004218j:plain

まず「Modern UI(Metro UI)」と呼ばれるタッチパネルに最適化されたユーザーインターフェイス(UI)と、従来型の「デスクトップ」との画面遷移に非常に違和感を感じました。Modern UI からいきなり従来型デスクトップに飛んだり、その逆があったり、何かの拍子に画面が2分割したり、同じアプリでも「Modern UI版」と「従来型デスクトップ版」がそれぞれあったり、初めて直面するユーザーは軽いパニックに陥るかもしれません。

また、従来型デスクトップでも、フルスクリーン表示がデフォルトになっていたりして、「ウィンドウ」的なものを極力排除しようとしていることが伺えます。ちょうど、昔の MS-DOS アプリの時代に逆戻りした雰囲気です。
おかげで、ファイルをドラッグして別のフォルダに移動やコピーをしたり、2つのフォルダを見比べたりするのに、いちいち毎回ウィンドウを縮めないといけません

Modern UI アプリの閉じ方がわからないという問題は、前述の4月8日の Windows 8.1 Update の適用で、カーソルを画面上端に当てると右上に「×」が表示されるようになり、非タッチパネル搭載機では、ログオン後にタイルメニューを表示せずにすぐにデスクトップ画面を表示するように変更となりました。

f:id:align_centre:20140407220133j:plain

MicrosoftApple の Design 哲学の違い

当初は Mac の真似と批判されながらも Windows 95 〜7 まで15年以上に渡って受け継がれてきた「スタート」メニューが無くなってしまったことは、企業にとっては生産性にも影響しかねない問題で、最大の非難の的でした。

MicrosoftWindows 8 をリリースしてから1年半経ってようやく非難に応えて軌道修正するようで、今年中に予定されている次の大きなアップデートで「スタート」メニューが復活すると発表したようです。

MicrosoftAppleユーザーインターフェイスデザインについての決定的な違いは、「Microsoft は画面や、表面的な要素を中心にデザインしている」ように見えますが、「Apple は画面ではなくユーザーの頭の中をデザインしている」ように見えるという点です。

認知科学の古典・バイブル的存在として、

[asin:478850362X:detail]

が多く引き合いに出されることがありますが、この著者であるドナルド・A・ノーマン博士は、一時期 Apple Computer(当時)の副社長を務めていた人物でもあります。
Apple が他社の数歩先を行く先進的な製品を生み出せるのは、社内にはこうした認知科学的なアプローチによる「Design」が文化としてしっかり根付いているのでしょう。

AppleMaciPhone/iPad などのタブレット端末は本質的に別のコンテキスト(シチュエーション)で使われるものとし、搭載される OS を MacOS XiOS という、それぞれ別のものにして、大きな批判を浴びることもなく成功を収めています。

Microsoft にとって一番大切な顧客は誰?

Microsoft は、これまでビジネスの分野で大きなシェアを伸ばし、世界中の企業のほとんどに Windows がインストールされています。一方、クリエイターには MacOS が多く支持され、家庭向けでも iPhone の人気から MacOS もじわじわと利用者が増えてきているようです。

Microsoft にとって、一番大切なのはビジネスユーザーだったのではなかったでしょうか?
急に家庭向け専用かのような Windows 8 をリリースして、どういうシチュエーションで使われることを想定したビジョンを描いているのでしょうか?
パソコンからスマートフォンタブレット端末へのシフトは個人レベルでは急速に進行していますが、ビジネスユーザーの世界では未だに Windows XP が健在で特に不満もなく利用している所がまだ多くあります。

Microsoft にとって「顧客が本当に必要だったもの」は何と考えているのか?、有名な↓このマンガを思い出さずにいられません。

f:id:align_centre:20140407234529p:plain


[asin:483995111X:detail]

[asin:B00I5EF2W4:detail]

[asin:B00GSJ1EXY:detail]

[asin:B00IIGDO8S:detail]

当ブログでは、Google Analytics, Google AdSense 等を使用しています。Google によるデータの収集ポリシーについて詳しくは「Google のサービスを使用するサイトやアプリから収集した情報の Google による使用」を参照ください。
当ブログに掲載の画像や文章等コンテンツの、引用の範囲を超えた無断転載はご遠慮ください。画像等のコンテンツにはメタデータで著作者情報等を埋め込んでいる場合があります。図やチャートの利用をご希望の場合は、お問合せフォームあるいは、Twitter @align_centre 宛にDM等でご連絡ください。