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ポータブル USB DAC「DENON DA-10」レビュー 〜第2回:音質評価編

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前回の「到着・ファーストインプレッション編」に続き、今回は、実際に様々な音源やヘッドホン/イヤホンで試聴・試用してみた感想を書いてみたいと思います。

まずはじめに前提ですが、ここでは、主に「オーディオにあまり詳しくはないけれど、オーディオや USB DAC に関心を持っている」方や、「えっ、4万円もするの!?」という方に向けて、「DA-10」はどう位置づけられるか?という観点でレビューをしたいと思います。

そのため、オーディオにある程度通じた方や高級オーディオ機器を聴き慣れた方にはあまり参考にならないかもしれませんので、雑誌やメディアのレビューなどもあわせてご覧ください。

今回の音質評価の環境ですが、比較対象となる手持ちの USB DAC が「FiiO E07K」(1万円弱)、ヘッドホンは「SONY MDR-Z900」、イヤホンは「SHURE SE215」がリファレンス。
再生環境は MacBook Air (Early 2014, MacOS X 10.9.5)、iTunes、Audirvana Plus 2.0、VOX 2.0、iPhone 5c などです。(Windows 環境ではテストしていません)
尚、ヘッドホンやイヤホンは他にもいくつかあるので、相性のよかった機種なども紹介したいと思います。

ご注意

  • 音質に関する感想は嗜好や経験などに左右される主観的なものですので、予めご了承ください。

やはり音楽が心地よく聴こえる

ファーストインプレッション編でも「あらゆる音が心地よく聴こえる」と記しましたが、その後ヘッドホンやイヤホンをとっかえひっかえし、音源もハイレゾから、CD、AAC、MP3、YouTubeインターネットラジオなど、様々な条件で試聴してみましたが、その印象は変わることはありませんでした。

総じて感じたのは「DA-10」は「音楽を音楽として楽しく聴ける DAC」だということ。

DAC(D/Aコンバーター)は文字通りデジタル信号をアナログに変換する装置ですが、この「DA-10」の場合は、計測器のように正確無比にデジタル信号を変換するだけでなく、「音楽」として楽しめる音にグレードアップしてくれるように感じます。「音楽を音楽としてより楽しめる」ような音がするのです。

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感覚的表現で言えば、

  • 音に厚みや緻密さ、上品さを感じる
  • それでいて音の立ち上がりの切れ味がよくダイナミック
  • 低音域は重厚で、中〜高音域はクセが少なく音のヌケがよい

具体的な例では、

といった感じ。

普段使っている実売1万円前後の USB DAC「FiiO E07K」と比較するとこの違いはかなり顕著で驚きました。「これが4万円の音なのか」と。

圧縮音源さえも高音質化する「Advanced AL32 Processing」の威力

いわゆる「ハイレゾ」音源の音質がよいのは当然ですが、「DA-10」では AAC や MP3 などの圧縮音源を再生しても、それと意識させないレベルの音質で聴くことが出来ました。「DA-10」で聴いた後に同じ曲を「FiiO F07K」で聴くと、どうも音が薄っぺらく感じてしまったり、圧縮ノイズが気になってしまうのです。

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「DA-10」の音がなぜこのような「音楽的特性」に優れるように感じるのか、そのキーの一つとなるのは「DA-10」に搭載された DENON 独自のビット拡張技術「Advanced AL32 Processing」にあるようです。

オーディオメーカー各社とも同様の技術を開発していますが、DENONの「Advanced AL32 Processing」は、同社のフラッグシップ機「DCD-SX1」に搭載されているものと基本的には同じで、CD音質「16bit/44.1kHz」の音声信号を音の強弱を表すビット数を32bit(16bit の 65,536 倍)に、サンプリング周波数を16倍に拡張し、デジタル化で損なわれた微小信号を補完することで、原音により近い波形の音を再現するというものです。

このためか、Mac 用のハイレゾ音源再生ソフト「Audirvana Plus」で再生すると、DAC側のビット数が「32bit」と表示されます。

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技術的な詳細は以下の記事を参照して頂くとして、「DA-10」には「Advanced AL32 Processing」以外にも、高級機で培った技術が注ぎ込まれており、同様のコンセプトで先行して発売され、好評を博しているデスクトップ型 USB-DAC 「DA-300USB」を、スペックや設計思想はそのままに小型軽量化し、さらに7時間の連続使用が可能なバッテリまで搭載してしまったという、入魂の製品のようです。

簡単に言えば、50万円クラスのハイエンド機に搭載されているものと同じ技術が、この4万円ちょっとの「DA-10」にも搭載されているということです。

そうした背景をふまえると、4万円と言えども高級機に匹敵する性能を持つ、実はコストパフォーマンスがとても高いモデルであることがわかります。

YouTube も高音質で楽しめる♪

「Advanced AL32 Processing」は、聴感上圧縮音源さえも高音質化するようにチューニングされているようで、YouTube のミュージックビデオなども非常に高いクオリティで聴くことができます。
一例としていくつかピックアップしてみたいと思います。

JORANE - J'ai demandé à la lune


フランスのロック/ポップバンド Indochine の曲「J'ai demandé à la lune(僕は月に頼んだ)」をカナダのチェリスト/シンガー、Jorane が弾き語りカバーしたものですが、声やチェロの弦の質感がきれいに出ています。ちなみに、この曲の iTunes 版はピアノとの共演となっていますが、この YouTube のチェロ・デュオバージョンの方がバックグラウンドノイズが少なく、音質がよかったりします。

Taylor Swift - We Are Never Ever Getting Back Together


日本でもヒットしたこの曲、一部音圧が高すぎて音が潰れて歪んでしまっている箇所があるのですが (この YouTube 版より iTunes ダウンロード版で顕著)、DA-10 で聴くと、躍動感はそのままに、歪みがあまり気にならない程度に軽減されます。

Perfume「Spending all my time」


中田ヤスタカ氏プロデュースの Perfume の曲はどれもそうですが、音の立ち上がりのキレの良さ、空間的に配置された音像定位(音の位置)の正確さ、音の解像度(分離のよさ)が際立ちます。

Novika - Movie Girl


ノイジーなラジオボイスのヴォーカルを中心に、それとは対照的にクリアな伴奏やパーカッションが空間的に広がるように響く曲。「チーン♪」と鳴る金属音が DA-10 で聴くととても気持よく伸びやかに響きます。

「CD」の音質のよさに改めて気づく

YouTubeAAC、MP3 などの圧縮音源もなかなかの高音質でしたが、「普通のCD」クオリティの音源を改めて「DA-10」で聴いてみると、AACやMP3などの非可逆圧縮音源と比べ、格段に音質がよいことに改めて気づかされました。

イエスタデイ・ワンス・モア

イエスタデイ・ワンス・モア

個人的にオーディオ機器のサウンドチェックによく使っているこの曲、普段は CD から iTunes で取り込んだ AAC で再生しているのですが、改めて元のCDから「FLAC」形式(ハイレゾ音源でも使われる音質劣化のない可逆圧縮形式)に変換し、Mac 用の高音質再生ソフト「Audirvana Plus」を使って「DA-10」を通して再生してみた所、AACの圧縮音源よりも格段にグレードアップした音質で聴こえました。
「FiiO E07K」でも同じ条件で聴いてみましたが、息遣いなどのニュアンスや空気感などの表現力が「DA-10」の方がやはり一枚上手でした。ここでもやはり「Advanced AL32 Processing」が効いているようです。

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ちなみにこのCD、今回引っぱりだしてきて気づいたのですが、偶然にも DENON の24bitレコーディングシステム「MASTER SONIC」で録音・マスタリングされたCDでした。どうりで音質や相性がいいはずです(笑)

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ヘッドホン/イヤホンのキャラクターがより際立つ

もう一つ、「DA-10」を使ってみて特徴的に感じたのは、接続する「ヘッドホンやイヤホンのキャラクターがより際立つ」ということです。おそらく中〜高音域にかけての「クセの少なさ」から来ているものだと思いますが、ヘッドホンやイヤホンそれぞれの個性がはっきり出てくる感があります。

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例えば「beats solo 2」では、重厚な重低音とキレのいいアタックに、頭を突き抜けるようなパンチのある音、Final Audio Design の BA イヤホンでは BA 型ドライバのシャープで繊細な高音域と締りのいい低音、「SHURE SE215」ではしっかりした低域とストレートでヌケのいい中高音、2千円前後の低価格コスパ最高の「Philips SHE9710シリーズ、audio-technica ATH-S100 シリーズ」でも、音がチープになることもなく、それなりにいい仕事をしてくれます。

そういった点で「DA-10」は、様々なヘッドホンやイヤホンをつけかえて、それぞれの個性を楽しむのにも最適な機種とも言えるかもしれません。

DA-10 との組み合わせで気に入ったイヤホン「Carot One TITTA」

手持ちのヘッドホン/イヤホンを色々試してみて個人的に気に入ったのは、先ほどの写真にも少し写っていましたが、イタリアのオーディオブランド「Carot One」の「TITTA」というイヤホン。Amazon で 7千円ちょっとで手に入ります。

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オレンジ色のアルミハウジングにブルーのケーブルという、オシャレな外観通り、イタリアのカラっと晴れわたる天気のように(行ったことないけど...)、あらゆる音楽が「明るく楽しくオシャレに」聴こえ、いつまでも聴いていたくなるような音です。まさにAmazon のレビュー通りという感じ。

相方もこの音が気に入ってしまって、取り合いになっています(笑)

音楽的表現力と原音忠実性の絶妙なバランス加減

USB DAC を始めとするオーディオ用 D/A コンバーターは、まずは高精度に元の信号を忠実に再現するという使命があります。
しかし、単純に高精度にするだけでは「音楽」として聴いた時に何か物足りなかったり、味気なかったりしするため、オーディオメーカー各社では「音づくり」によって「音楽的表現力」を高める工夫を凝らしています。

「DA-10」でも「Advanced AL32 Processing」を始め、D/A変換処理の方式やアナログ回路に工夫をこらすことで「音楽」として楽しめる音を実現していますが、オーディオメーカー毎にこの「音づくり」の方向性が異なり、そこがまたオーディオの面白さや組み合わせによる幅広さを生み出しています。

DENON DA-10」の音は、過剰に色付けしすぎない「原音忠実性」と、味わいある音を奏でる「音楽的表現力」のバランスがとても絶妙だと感じました。

1万円前後の USB DAC との一番大きな違いは、スペックもさることながら、そうした部分が大きいように感じます。

4万円の USB DAC は「高い」か「安い」か?

1万円前後の USB DAC では、使用される DAC チップの性能にも差がありますが、ある意味 DAC チップ頼みになっている部分もあり、「DSD」形式には非対応だったり「音づくり」の余裕までは充分とれていないケースもあります。

しかし、2、3万円以上の価格帯になると、DACチップは一様に高性能なものが搭載されており、さらにデジタルデータのゆらぎ(ジッター)対策や DAC チップに頼らないD/A変換処理の工夫などによる更なる高精度化の他、アナログ回路や電源回路等の検討も充分に行われ、それが音質にも現れているように思います。

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簡単に言えば、1万円前後の USB DAC は、それまで USB DAC に触れたことのない人にとっては、「劇的に音が良くなった」と感じると思いますが、しばらく使っていると何か物足りなくなって「飽きやすい」場合があるということです。

USB DAC は、PCオーディオ、デジタルオーディオの要となる部分で、後々ボトルネックになりやすい部分でもあるので、買ってから3、4年で陳腐化してしまうスマートフォンやパソコンが6、7万円することを考えると、音楽を愛してやまない人なら、それよりも遥かに長く使え、ヘッドホンやイヤホンと違って壊れにくい「USB DAC」に多少なりとも「いいもの」を選んでおくというのは、その後の「ミュージックライフの充実度・満足度」という点では大きな意義があるでしょう。

「DA-10」を高いと感じるか安いと感じるか、ライフスタイルの中で「音楽を楽しむこと」をどう位置づけるか次第なので一概に言えませんが、もし店頭などで試聴して「お、これは!」と思う所があれば、買ってハズレのない製品だと思います。

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次回は、「使い勝手」の面を中心にレビューする予定です。お楽しみに〜♪

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