そもそもデジタルアンプを導入しようと思ったきっかけは、この夏の『Stereo』誌8月号付録でした。
上の記事でも書いたように、実家にはフルサイズのプリメインアンプ(ONKYO A-917R)があるものの、今はアパート暮らしなので置ける場所がなく、アンプもないのにスピーカーだけ手に入れてしまったという状態に(笑)
そこで、アンプ探しが始まりました。
格安で高音質の「中華デジタルアンプ」
アンプと言ってもピンきりですが、ネットで色々調べていると、中国メーカー製のデジタルアンプが「小型で格安ながら高音質」ということで話題になっているようでした。ちょうど「デジタルアンプ」が気になっていた所で、どんなものか試してみたいとも思っていたので、その線で選定を進めました。
ひとまず Amazon で扱っているものでどんなものがあるのかひと通り調べ、スペックやレビュー、使い勝手などを吟味した結果、日本でも実績ある TOPPING 社製の比較的新しい機種「VX1」をチョイス。
VX1 選定のポイントは次の点です。
- 比較的評価のよさそうな Tripath 製デジタルアンプ IC「TA2021B」を搭載
- 見た目も剛性感があり造りがしっかりしていそうで、メーカーサイトを見る限り部品も信頼できそう
- RCA アナログ入力の他にハイレゾ対応 USB デジタル入力がある(ただ、パソコンのオンボードDACにも採用される「VT1620A」なのであまり期待はしていない)
- ヘッドホン出力をサブウーファー出力としても使える
- 安すぎず高すぎない
この中でも「ヘッドホン出力がサブウーファー出力としても使える(スピーカーとヘッドホンから同時に音が出せる)」点が一番大きな決め手だったかもしれません。
というのも、『Stereo』誌付録のスピーカーと別冊の専用エンクロージャーキットでは低音はあまり期待できないので、手持ちのサブウーファーを活用できそうだからです。
ちなみに、この時デジタルアンプを調査した副産物として出来たのが、次のデジタルアンプ比較一覧です。
Amazon で発注・開梱編
早速 Amazon で発注して届いたのがコチラ。
中国メーカーということで、一体どんなものが届くのかと思っていましたが、意外に(?)ちゃんとした黒い箱で届きました。
フロントパネルは8mm厚のアルミ板。なかなかの重厚感があり、筐体も剛性が高くしっかりしています。
尚、あわせてスピーカーケーブルも発注しましたが、アンプ側はバナナプラグ対応、スピーカー側(『Stereo』誌付録ドライバー+ムック付録の専用エンクロージャーキット)がプッシュ式ターミナルだったので、片側がバナナプラグ、もう片側がプッシュ式用に末端処理済みのケーブルを選びました。(バナナプラグ単体のセットよりも安かったので)
これがまた予想以上に太くて丈夫な上、布目被覆で取り回しがしやすく、端子もしっかり金メッキされています。これも多分中国製。
「無色透明」なクリアで色付けのない音
音を出してみてまず感じたのは、「色付けがない」「無色透明」。
ボリュームを上げてもホワイトノイズは皆無で、とてもクリアで澄み切った音です。
「個性がないのが個性」といった感じで音にクセがなく、ソースの音の傾向がそのまま出てくるような風体といったところでしょうか。
今のところ、『Stereo』誌付録のスピーカーしか手元にないのでなんとも言えませんが、ウーファーが 83dB、トゥイーターが 84dB という、能率的には低めのこの付録スピーカーも軽々と鳴らし、ドライブ力も充分ある感じです。
アンプとスピーカーは1階に設置してあるのですが、戸を開け放っていると2階でも歌詞がはっきり聴き取れるほどクリアでクッキリした音が聴こえます。紛れもなく、実家で聴いていた「単品オーディオの音」です。
さらに、深夜などに極小音量にボリュームを絞っても左右のバランスが崩れることもなく、非常に安定しています。
USB 接続が意外に使える
Mac からの USB 接続では、意外にもクリアで繊細な音が聴けました。
搭載DACチップは「VT1620A」で、24bit/96kHz の入力に対応しているものの、スペック上は S/N比が 95dB と頼りないのですが、聴感上はそんなスペック上の引け目は感じさせず、繊細な音も細やかに、キレのあるクリアでダイナミックな音を聴かせてくれます。
ちなみに、入力に USB を選択している時は、PC の USB ケーブルを外したり PC の電源を落とすと、自動的にスタンバイモードになり、PC を起動したり USB ケーブルを接続すると ON になる、というギミックもあります。
ライン入力もソースに忠実な音
1系統あるRCAピンプラグのライン入力ですが、これもクセがなくソースの傾向が素直に出てくる感じです。別のDACのアナログ出力を入力してみると、「その DAC の音」がします。
また、テレビの音声出力を「VX1」を通して聴くと、驚くほど声がクリアに聴こえます。もうテレビから出る音は聴けません。
ヘッドホン出力がなぜかイマイチ
スピーカーからは非常にクリアな音を聴かせてくれる「TOPPING VX1」ですが、1つ大きな欠点がありました。
それはヘッドホン出力がなぜかしょぼいこと。
オペアンプICに「OPA2134」を使っているようですが、ヘッドホンで聴くとなぜかベールを被せたような、曇ってヌケのよくない音場の狭い音になってしまうのです。オペアンプ自体はそれほど性能が見劣りするわけではないようなので、周辺のアナログ系統に何か原因がありそうです。
参考:
色々なヘッドホンで試したり、USB/AUXのソースなどを変えてもこの傾向は変わらず、一様にもやもやと鼻が詰まったような音になります。この個体だけの特性なのか、VX1自体の特性なのか判断は出来ませんが、とにかくヘッドホンではちょっと聴きたくない感じです。
スピーカーからの出力がとてもクリアで繊細かつクッキリしているだけに、ここがとても残念な点です。
ヘッドホン出力は専らサブウーファーにつないでいるので普段の使用ではあまり問題にはならないので、まあいいかという感じです。
スピーカーやソースの個性を引き出すコストパフォーマンスの高い機種
この TOPPING VX1、「ヘッドホンアンプとしてはあまり期待できない」という点を除いては、総じてコストパフォーマンスの高い機種だと思います。Amazon でも購入時(7月)から価格が現時点まで全く変わっていないところを見ても、製品としての安定感があります。
「場所をとらないミニマムなオーディオシステムを組んでみたい」とか、「初めてのPCオーディオ用に手頃なアンプを探している」といった方には特にオススメです。
「デスクトップでPCオーディオを始めよう」「予算3万円でオーディオを始めてみよう」という時などにはうってつけでしょう。
何より「無色透明」な音なので、組み合わせるスピーカーやソースの特徴をうまく活かすことができそうです。(もちろん相性などもあるでしょうから断言はできませんが)
デスクトップオーディオ機器や Bluetooth スピーカーでは体験できない「単品オーディオの音」を手軽に体験できるという点でも、このクラスのデジタルアンプは、1台あると何かと便利です。
追記
強敵が現れました!