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思索と探索のクロッキー帳。オーディオや音楽の話題、レビューなども。

秩序を維持する最も簡単な方法

ある系において、ある事柄が一定の秩序を保つようにするためにはどうするか?
例えば組織であれば、組織内にその事柄を専門に扱う機関を設けてその処理を集約させる、あるいはその事柄の取り扱い方のルールや規則を作って周知徹底させる、といったことが挙げられそうだ。

つまりそれは、その事柄について「判断のバリエーションを最小にする」ということになるのではないだろうか?


人間や機械を問わず、全ての動作はなんらかの「判断」に基づくという前提での話として、ルールや規則はその理解と認識を求めることで判断のバリエーションを減らすことが「期待」できるだろうし、その判断を行う人の数を減らせば必然的に判断のバリエーションが減ることになる。
では、高い秩序を最も低いコストで実現できるのはどんな状態か? それは「たった一人だけがその判断を行う」状態ではないだろうか。

言い方を変えれば、これは「中央集権」あるいは「独裁」とほぼ同義とも言える。ルールや規則は守られない可能性があるが、たった一人だけが判断を行えば「判断」はその人が持つ判断のバリエーションのみに限定される。ルールや規則を決めている余裕がなかったり、決めたとしても確実に徹底できるあてがない環境下では、この方法はそれに勝る強い秩序維持の効果をすぐに発揮できる点で非常に有効だと思う。
秩序の中でも、他の人の行動を規定することで得られる秩序の場合は、その判断に基づいて行動させる仕組みが別途必要になりそうだけれど、調達するものの仕様を一定のものにしたい場合などには即効性が高い。
また、充分な権限を与えられないまま、事実上その事柄の秩序を維持しなければならない状態になった場合には、ルールや規則を適用する権限がないので、流れを仕向けてできるだけ判断を一元化できるようにする工夫することで、権限を持たずして秩序を維持できる可能性がある。
この他にも、ある製品をユーザーに利用してもらう場合、製品の使用方法は開発製造する側が「判断」する形になるので、製品の利用における秩序の構造という点では同じことが言えるのではないだろうか。もちろんその場合は、先ほどの他の人の行動を規定することと同じなので、その判断に基づいてユーザー行動させる仕組みが別途必要になるが。


「中央集権」や「独裁」という言葉に抵抗を感じる人が多いが、それはよく知られた「独裁者」にはたまたま「独裁」のやり方が強引だったり自己中心的な人が多かっただけで、「独裁」というコンセプト自体に問題があるわけではない。企業などの組織の中には普通にある仕組みだし、WindowsドメインActive Directory などのアクセスコントロールなどを司る仕組みも基本的には似たようなコンセプトだ。


ある系にどのような秩序維持システムが適しているかは系によって異なるのではないだろうか。例えば、ある秩序維持システムがある国でうまくいっているからと言って、他の国でも同じシステムが同じように機能するとは限らない。秩序ある状態と無秩序な状態ではどちらが暮らしやすいか。人間の生活にとって平和と秩序はどちらを優先すべきか。
自国や自社の秩序維持システムを他の国や他の企業に押しつけようとして反発を買ったり導入に失敗する例が跡を絶たないのは、やはり自らを相対的、批判的に捉えていないからなのだろうか。


秩序維持システムは「そもそも法律は何のためにあるのか」を議論する上で重要な位置を占めそうなので、それについてはまた後日書きたい。

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