携帯電話のMNP(Mobile Number Portability)がいよいよ10月24日に始まるが、いくつかのメディアが使う「番号持ち運び制」という訳に違和感を感じる。
「電話番号」を「持ち運ぶ」という概念って、そんなになじみ深いもの? 今まで持ち運んだことある? 多くの人は「電話番号を持ち運ぶ」という概念を頭の中に持っていないと思う。
番号の持ち運びと言うと、第3世代携帯の特徴である電話番号や契約情報の入ったSIMカードを他の携帯電話や他のキャリアに持ち運べるという意味か?とも思える。日本では実際にはできないけど、海外(GSM)では普通らしい。
調べてみると、どうも総務省の「携帯電話の番号ポータビリティの在り方に関する研究会」で、「メディアの表記にまかせる」となってから、各メディアが独自に表記するようになったらしい。
ITmediaモバイル記事
http://plusd.itmedia.co.jp/mobile/articles/0404/01/news049.html研究会では、「番号(ナンバー)ポータビリティ」という日本語が、はたして消費者に正確に理解されるかといった議論もあった。
インボイスの木村育生社長は、いわゆるマイライン導入にあたり、販売代理店の人間が消費者に「マイラインというのは、割引サービスなんです」との誤った説明を行ない、特定のキャリアサービスへの勧誘につなげることもあったと指摘する。「ナンバーポータビリティでも、同様の事態が起こるかもしれない」(木村氏)。“ナンバーポータビリティ”ではなく、日本語表記を心がけるべきでないかとした。
これに対し、同研究会の構成員で、日本経済新聞論説委員でもある関口和一氏は、「日経新聞でも、そうした議論はあって、最初は『持ち運び制度』にしようかという案が出た」とコメント。「しかし、携帯は持ち運べるのに、この上何を持ち運ぶんだということになって、結局は意訳である『番号継続』などの表記にした」。
結局は、研究会の座長である東京大学名誉教授の齊藤忠夫氏が、「そういうのは新聞が得意なこと」とコメント。メディアの表記にまかせるべきとの見方を示した。
確かに portability には「持ち運び」という意味もあるけど、この場合はもう一つの意味の「移植性(移植できる)」の方が適しているんじゃないかと思う。ソフトウェアやゲームなどが他のプラットフォームや開発言語に移植しやすいこと/できることを指す。電話番号を他のキャリアに「移植」する形になるわけだし。
goo辞書 - portability
http://dictionary.goo.ne.jp/leaf/ej3/65485/m0u/
それはさておいたとしても、実質的には「同番移行」とか「番号継続」なのだから、誤解の無いように意訳すればいいし、実際そうしているメディア(日経など)もある。
新しい言葉を使って「何それ?」を狙う戦略もあるが、今回の場合は「ポータビリティ」とは何かをわかりやすくするのが目的のはずだ。これでは一体何のために日本語訳してるんだかわからない。
ちなみに、当の携帯電話各キャリアは「携帯電話番号ポータビリティ」と表記している。無難な選択だ。
あいかわらず日本のメディアの言語力はあてにならないなぁ。
こうして日本語のエントロピーはどんどん増大していくのかな。
(mixiより移植)