white croquis

思索と探索のクロッキー帳。オーディオや音楽の話題、レビューなども。

デジタルアンプ「Soundfort AS-100」を試す 〜音楽表現力豊かな実力派アンプ

f:id:align_centre:20150109030437j:plain

オーディオシステムの要になるアンプ、その中でも、最近は「デジタルアンプ(D級アンプ)」というジャンルのものが以前よりも広く認知されて浸透してきた感があります。

詳しくは次の記事をご覧頂くとして、「デジタルアンプ」は価格の割に音質がよく、一昔前の高級機をも凌駕するとも言われることもあります。

ただ、この記事を見ても分かるように、現在市場に出回っている小型デジタルアンプのほとんどは中国メーカー製で、以前紹介しましたが、自分も「TOPPING VX1」という中国メーカー製のデジタルアンプを購入して使っています。

"Designed in Japan" のデジタルアンプ「Soundfort AS-100」

そんな昨年末のある日、数少ない国内メーカーの一つである「Soundfort」さんから、このブログをご覧頂いたとのことでお声を掛けていただき、同社のデジタルアンプなどいくつかの機器をお借りして、試用する機会を得ました。
(予め断っておくと、このレビュー記事は個人的な趣味で書いたもので、特に依頼されたりしたものではありません)

「Soundfort」は、以前「DKL Audio」ブランドでオーディオ機器を製造販売していた中国深センの DKL Technology 社と日本のMJTS社が共同で立ち上げた、まだ出来たてのブランドだそうで、今後は「Soundfort」ブランドとして製品を送り出していくとのことです。

さらに、もともと製品の設計自体はオーディオを愛してやまないというベテランの日本人エンジニアによって行われているようで、他の中国メーカー品とは一味違いそうです。

デジタルアンプ「AS-100」は、DKL Audio 時代に「AP-90」という型番で販売されていたものですが、中身は同じとのことで、今回お借りしたのは旧型番の「AP-90」です。

[asin:B00DQ4JVR0:detail] ※2017年に後継機の「AS-100+」が出ています [asin:B074WJZQ6L:detail]

コンパクトな本体からは想像できない表現力豊かな音

「AS-100」を始めとする同社のコンポーネントは幅10cmにも満たないコンパクトなサイズで、デスクトップなどにも気軽に置ける大きさです。

f:id:align_centre:20150108191741j:plain f:id:align_centre:20150108191748j:plain

早速、VX1から配線をつなぎ替えて音を聴いてみました。スピーカーは、Cambridge Audio SX-50 に、先日末端処理をした ACROTEC の 6N スピーカーケーブルで接続しました。

一聴してまず感じたのは、「デジタル臭さを感じない」ということ。

普段使っているデジタルアンプ TOPPING VX1 は「無色透明」といった感じの音で、どちらかと言うと「無機的」な「デジタルっぽい」傾向があります。しかし、AS-100(AP-90) では、音楽の情感がより豊かに感じられ、特にヴォーカルが男声/女声ともに伸びやかで心地よく聴こえます。
目隠しされたら、ディスクリート構成のアナログアンプの音を聴いているような気さえします。

Katie Melua - Better Than A Dream
ヴォーカルが情感にあふれ、とても瑞々しく聴こえます。


帯域バランスは低音がやや強めに出る感じがありますが、おそらくデスクトップシステムとして小型スピーカーを想定したチューニングなのでしょう。
全体的にウォームでウェットな感じで聴き心地がよく、その割には音が膨らみすぎることもなく、解像度もあり、アタックもキレがあります。

そして困ったことに、TOPPING VX1 よりも、この AS-100(AP-90) のほうが個人的に好みの音です。
中国メーカー品の音は、教科書通りに作られたような雰囲気がありますが、AS-100(AP-90) は、やはり熟練した日本人エンジニアの手による設計のためか、全体的な「音の完成度」が高く感じます。

ここが、中国の若い技術者による新興オーディオメーカーと日本のオーディオメーカーとの大きな違いなのかもしれません。

Far East Movement - Turn Up The Love ft. Cover Drive
重心のしっかりした重低音とキレのよいアタックでグルーヴ感あふれるリズム。音の分離や解像感も高く、細かな音までクッキリ聴こえます。

デジタルアンプICは「TDA7491HV」

AS-100(AP-90) に採用されているデジタルアンプICは、スイスに本社を置く STMicroelectronics 社製「TDA7491HV」。
この型番を見てピーンときた方は鋭いです。『Stereo』誌2012年1月号、2014年1月号付録の 「LXA-OT1」「LXA-OT3」に搭載されているものと同じ、音質に定評あるチップです。

f:id:align_centre:20150109005816j:plain
同じく「TDA7491HV」搭載の LXA-OT3

『Stereo』誌2014年1月号付録の「LXA-OT3」は持っているので、実際に聴き比べてみました。

雑誌の付録と比較しても…という感はありますが、同じチップということで音色の「傾向」は似ており、「LXA-OT3」もなかなか健闘しています。しかし、音の安定感や解像感、質感など、「音楽的表現力」という点で「AS-100(AP-90)」が圧倒的でした。

Phildel - Beside You
透き通るようなヴォーカルが透明感たっぷりにとても心地よく響きます。サ行が刺さる感じも一切なく滑らかです。

こだわりを感じる基板レイアウト

メーカー担当者さんに許可をもらったので、気になる中を開けてみました。
前面のボリュームつまみと基部のナットを外し、背面のヘックスネジを外すとするすると出てきました。

f:id:align_centre:20150109000430j:plain

写真でも分かるように筐体の厚みがかなりあり、剛性感があります。
そして基板がこちら。

f:id:align_centre:20150109001621j:plain f:id:align_centre:20150109001631j:plain

中央に「TDA7491HV」が鎮座し、部品とパターンの配置が整然と美しく配置されているのが、素人目にもわかります。また、LXA-OT3 のようにオペアンプは使われておらず、パワーアンプIC以外は完全ディスクリート構成のなかなか贅沢な仕様です。

LXA-OT3 と並べてみるとこんな感じ。

f:id:align_centre:20150109003746j:plain

基板サイズも価格も違うので比較するのも乱暴ですが、AS-100(AP-90) は押し込めた感じもなく、使われているパーツも含めシンプルで合理的な余裕のある設計になっている印象です。(回路に詳しくはないので、あくまで「印象」です(笑))

本体が軽すぎるのがアダに?

デジタルアンプは変換効率がよく発熱も少なく、アナログアンプと比べて非常に小さく軽いのも特徴ですが、AS-100(AP-90) も約450gと非常に軽量です。

しかしそれが裏目に出て、メカニカルなプッシュ式の電源スイッチが少し固く、電源を入れようとスイッチを押すと、本体ごと後ろにズズーっと下がってしまいます。オーディオ機器類は、人造大理石ボードの上に載せているのですが、ゴム足の踏ん張りが効かないようです。
そのため、電源スイッチはフロントパネルの端に人差し指を当てて挟むように押す感じになります。

もう1点少し気になるのは、電源ランプのLEDの穴が最近の他社機に比べると大きく、部屋を暗くしていると結構目立つという点。幸いブルーではなくレッドなのでそれほど眩しくはありませんが、最近は小径LEDの機器が多く、他の機器と並べるとちょっと気になります。

f:id:align_centre:20150109020023j:plain

総じてコストパフォーマンスが高くオーディオ入門にもオススメ

この製品、Amazon では送料込みで8千円ちょっとで販売されています。内容的には1万円を超えていてもおかしくない完成度ですが、このリーズナブルさはちょっと驚きです。これからオーディオを始めてみようという方の最初のアンプとしてもオススメです。

[asin:B00DQ4JVR0:detail] ※2017年に後継機の「AS-100+」が出ています [asin:B074WJZQ6L:detail]

中国メーカー製品にはさらに安いものも多くありますが、好きな音楽をより心地よく、より上品な音で聴こうとするなら、"Designed in Japan" の AS-100(AP-90) は個人的にも選択肢に入れたいと思える機種です。

ちなみに「ヘッドホン出力がない」のが気になる方もいるかもしれませんが、このアンプと組み合わせて使うことを前提としたヘッドホンアンプ「HS-100(旧型番 HP-90)」がラインナップされています。上の写真にも写っていますが、これも後日レビューする予定です♪


Taylor Swift - Blank Space
今や飛ぶ鳥を落とす勢いのテイラー・スウィフト。この曲の鮮烈なパーカッションはオーディオ機器の音の立ち上がりのよさが試されるかのようです。
当ブログでは、Google Analytics, Google AdSense 等を使用しています。Google によるデータの収集ポリシーについて詳しくは「Google のサービスを使用するサイトやアプリから収集した情報の Google による使用」を参照ください。
当ブログに掲載の画像や文章等コンテンツの、引用の範囲を超えた無断転載はご遠慮ください。画像等のコンテンツにはメタデータで著作者情報等を埋め込んでいる場合があります。図やチャートの利用をご希望の場合は、お問合せフォームあるいは、Twitter @align_centre 宛にDM等でご連絡ください。