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静的な「完成」から動的な「システム」の世界へ

ある条件下で予め設定した一定の状態に達したとき「完成」と呼ばれる。しかし、「完成する」ということ自体が相対的な概念なので、前提となる条件が変わればその状態は「完成」ではなくなってしまう。

自然界では物事は常に変化していて、これで出来上がりとかこれで終わりというものはない。「完成」というのは人間の都合で生み出された概念なのだろう。しかしそれによって「完成されたもの」や「完成形」「完全体」といったものが存在するかのような錯覚を引き起こしてしまっているような気がする。

「完成」を規定する前提条件は、ある種の制約によってできていることが多い。ものを作る上では、特に技術的な制約が前提条件を形作る上で大きなウェイトを占めそうだ。ある時代の技術では完成とされたものも、新しい技術が開発されることで過去のものとされることを人類は幾度となく経験してきている。
こうした技術革新や物事の変化のスピードが速くなってきたとき、「完成」というある一定の状態を指す静的な概念を基準に考えることが、対象を的確にとらえにくくしている可能性はないだろうか。


「動的(dynamic)」であることがWeb 2.0の概念を表すキーワードの一つだ。動的なものには「終わり」や「完成」はないので、Web 2.0の概念は、より自然界に近い動的なシステム(系)ととらえることも出来そうだ。

環境側の変数によって結果が変わる動的な仕組み自体もさることながら、「完成」する前から公開し、見かけ上は「完成」と呼んでもよさそうな域に達しても、作る側としてはまだ完成とは思っていない「永久にベータ版」というのも動的と言える。

動的な世界では、ある一瞬の状態を切り出したところでそれはただその瞬間に観察された結果に過ぎず、それだけでその世界を語ることは出来ない。自然科学、特に生物学では早い時期からこの問題に直面し、生物と環境が相互に作用し合う動的な世界を「システム」と捉えることで解決した。それが「生態系(eco-system)」であり「生態学(ecology)」だ。

この考え方は、生物学にとどまらず、「システム論」や「システム思考」としてビジネスの世界でも知られている。人間が活動が自然界の仕組みに収斂していくのは、ある意味「自然」なことなのかも知れない。

静的な「完成」の世界から、常に変化する動的な「システム」の世界へ。

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