以前にも「HS1004」「HS1005」という機種の試聴機をお借りした、オーディオブランド「Acoustune」さんより、2017年に発売され個人的に非常に気になっていた、超クールな外見ながら装着感抜群なイヤホン、「HS1501 AL」「HS1551 CU」及び、「HS1501」のチューニングを変えた「HS1503 AL」の試聴機をお借りし、じっくりと試してみました。
前回の記事(HS1004/HS1005):
「クールでメカニカルな外見」と「抜群の装着感」を両立した稀有な機種
ステレオイヤホンは、耳穴に装着するという性質上、概ねその形状は装着方式によって何パターン化に分けられ、デザインもややマンネリ気味なところがありましたが、この機種はそのマンネリ感を吹き飛ばすインパクトがあります。
しかも、デザインに凝った機種にありがちな、装着感や音質への妥協が一切ないというのも、この「HS1500」シリーズの驚くべき点です。
一見どうやって装着するのか?と思えますが、基本的には耳掛け式(Shure掛け)の要領で不思議なほどスポッときれいに耳にハマります。
この写真でもわかるように、耳のくぼみに本体がきれいに収まると共に、ドライバーの入ったハウジング部分がきれいに耳穴の方を向くという、一見奇をてらったように見えて、極めて合理的なデザインになっています。
では肝心の音質はどうなのか?各機種ごとに見ていきます。
全帯域をフラットかつダイナミックに鳴らし切る「HS1501 AL」
まずは型番の「AL」が示すようにアルミニウムのハウジングを採用した「HS1501AL」。
一聴して、ダイナミックで開放感あるサウンドに圧倒されますが、超高域から超低域までバランスがよく、どんな曲でも破綻なく聴けるオールラウンダーな感があります。
傾向で言えばモニター寄りのクセの少ないサウンドながら、
- 空間が適度に広い
- 音の立ち上がりのキレや収束、余韻もきれい
- 音の粒立ちがよい
- 楽器も金管系、弦楽器系共に得意不得意が特にない
- ヴォーカルの刺さりもない
など、音源を問わず楽しめる音、という印象です。
ダイナミック型でここまで粒立ちの良い音が聴けるのというのは、ちょっとした驚きでしたが、個人的には、30Hz付近の超低域の再現性のよさがお気に入り。Trance, HouseやEDMなど、Electronic系音楽との相性も抜群です。
芳醇な温かみのある響きの大人なサウンド「HS1551 CU」
「HS1551 CU」は、「CU」の型番が示すようにハウジングに銅を採用したモデルです。
ベースとなる音の基本的骨格は「HS1501 AL」と同じなのですが、ハウジングが変わるとここまで変わるのか!という驚きとともに、共通して採用されているドライバーの基本性能の高さを伺わせるモデルでもあります。
一聴して感じるのは、銅という素材特有の響きを活かした、ふくよかで温かみのある心地よい音。
「1501 AL」を聴いた直後に聴くと、中音域に厚みがあるためこもったようにも聴こえますが、深みのあるヴォーカルやヴィンテージ感あるサウンド、ライブ音源などの臨場感が生々しく、特にRockサウンドとの相性がよい印象です。
より分析的に聴くと、音源によっては筐体の響きが付帯音のように聴こえる場合がありますが、ジャンルによってはこれがよい味付けになったりするので、ここは好みの問題かなと思います。
一つ謎だったのは、個人的に推し?の超低域をチェックしてみると、30Hz付近の音がなぜか出ません。30Hz付近のチェックに使っている曲の他に、iPhoneのトーンジェネレーターアプリでも確認してみましたが、やはりなぜか出ません。
個体差の可能性もありますが、中音域に厚みを持たせ、Rock系サウンドに合うチューニングになっているので、あえてこの帯域を抑えめにしてバランスをとっているのかもしれません。
もっとも、日本のRock/Pop系には30Hzの超低域はまずほとんど入っていないので、気にする人はほとんどいないと思いますが(^^;
高域がどこまでも伸びる超ワイドレンジな「HS1503 AL」
「1503 AL」は「1501 AL」をベースとして、高域のチューニングを変えたとされる機種で、見た目も淡めのグリーンの筐体に赤っぽいハウジングという、ちょっと珍しいカラーリングです。
モニターライクな帯域バランスの「1501 AL」と比べると「1503 AL」は、一聴して高域が強調されていることがわかります。
曲によっては、高域のザラつき感が目立つものもありヴォーカルのサ行はやや刺さり気味ですが、キツすぎない刺さり具合です。
さらにこの高域、「HS1501 AL」よりも更に可聴上限が伸びている様子で、「HS1501 AL」ではオジサン的に16.4kHz付近が可聴上限だったのが、「HS1503 AL」では17kHz付近まで聴こえます。 その上で、超低域は「HS1501 AL」と同様に30Hz付近も良好で12〜15Hz辺りまで出ているので、かなりワイドレンジなサウンドと言えるでしょう。
ただし全般的には、やはり中〜高音域が際立っているので、おそらくダイナミックレンジが狭めのJ-POPや、日本のバンドサウンド、アニソンなど、高域に音が集中するタイプの曲に合わせて高域の解像度を高めたチューニングなのでは?と想像されます(その手の音源持ってないので充分検証できていません…汗)。
付属MMCXケーブルのクオリティが高い!しかし硬い!笑
3機種共通で付属するMMCXケーブルが、ある意味特徴的でもあります。
まず「丈夫」「太い」「硬め」といったキーワードが思いつきますが、冒頭の装着イメージの写真でもわかるように装着できないほどの硬さではありません。
が、メガネを掛けているとかなり気になるので、細めのケーブルにリケーブルしたいところですが、このケーブル、音質のまとまりの良さもさることながら、イヤホン側MMCX端子も堅牢ながら非常に抜き差しがしやすく、プレイヤー側の端子も強度や耐久性を兼ね備えたデザインなので、リケーブルするのも惜しいというのが悩ましい点でもあります。
また、標準付属ケーブルは3.5mmステレオミニプラグタイプですが、他に2.5mmバランスおよび、4.4mmバランス(Pentaconn)プラグのタイプもラインナップされています。
見るからにタフそうなプラグです。プラグが丈夫過ぎるゆえか2.5mmバランスプラグではプラグが折れないか心配になります…
ダイナミックドライバーのイヤホンとして、極めて完成度の高い機種
ダイナミックドライバーのイヤホンの中で、かなり上位に挙げられるイヤホンだと思います。
個人的に一番好みなのは、モニターライクなサウンドバランスの「HS1501 AL」。
モニタータイプのイヤホンというのもありますが、「HS1501 AL」はモニターライクでありながら、楽しく聴かせる音になっているというのがポイント高いです(ほしい)。
お値段はそこそこしますが、デザインと音質、装着感、高級感ある質感、耐久性などが他に類を見ない程の高次元で実現され、長く楽しめそうな機種なので、ランニングコストで考えれば実はお得な機種なのかも。(困ったことに(?)中古市場でほとんど見かけないのがその満足度の高さを裏付けているのかもしれません…)
http://www.e-earphone.jp/shopdetail/000000138014
http://www.e-earphone.jp/shopdetail/000000138016
http://www.e-earphone.jp/shopdetail/000000138015
http://www.e-earphone.jp/shopdetail/000000172660
おまけ:次期モデルの登場も近い?
2018年3月17日に開催されたポタフェス2018名古屋にて、Acoustuneさんのブースに、このHS1500シリーズをさらに素材やチューニング、ドライバーなどを変更したプロトタイプが多数展示されていました。
チタンやステンレス、真鍮の他に、純銀製の物もありました。
その中のいくつかは、夏にも発売予定とのこと。
個人的には、ステンレスモデルがかなりツボでした。
Acoustune 試作ステンレスモデル。
— 森あざらし "Azalush" (@align_centre) 2018年3月17日
アルミ、チタンと真鍮、銅の中間の感じで、個人的に一番好みかも。#ポタフェス名古屋 pic.twitter.com/uVgaWEHjdW
次期モデルから銀コートの柔軟な新ケーブルに!?
ポタフェス会場では、白く柔軟性の高い次期ケーブルが展示・試聴に使用されており、Acoustuneさんにお聞きしたところ、夏頃発売予定の次期モデルからはこのケーブルが標準になるとのこと!
実は、今回お借りした試聴機と共に、この白い銀コートケーブルも同梱されていましたので、試聴した感想を。(最終製品版とは異なる場合があります)
- 美音系
- なめらさでしなやかな音
- HS1551に使用時も同傾向にはなるが、HS1551のキャラクターはしっかり残る
- 押し出し感や音の濃さは従来ケーブルが勝る
名機の予感…
個人的には「HS1501 AL」が一つの完成形と思っていましたが、ケーブルの取り回しがネックで見送っていたところもあるので、この音質も取り回しも非常に好印象な、新しい銀コートケーブルが標準添付となれば、試作機の印象がよかったステンレスモデルと、かなり悩みそうな予感が…
この夏発売される機種は、ダイナミックドライバーイヤホンの名機となることはほぼ間違いないのでは?と思っています。